[OR29-2] C-Cケモカイン受容体2欠損ラットでは肺高血圧の病態が軽減する ~ゲノム編集技術を用いた検討~
Keywords:肺動脈性肺高血圧, 炎症, 動物モデル
【背景】肺動脈性肺高血圧症(PAH)の肺組織では、MCP(monocyte chemoattractant protein)-1等の炎症性サイトカインが増加し、単球/マクロファージの著明な浸潤が示されている。一方、MCP-1の病態・血管病変形成機序における役割については十分解明されていない。【仮説】MCP1の受容体であるC-Cケモカイン受容体(CCR)-2を欠損したラットでは、ラット肺高血圧(PH)モデルの血行動態指標、組織病変が軽減する。【方法】CRISPR/Cas9にてCcr2遺伝子欠損ラット(Ccr2(-/-))を作成した。SU5416+低酸素(SuHx)、またモノクロタリン(MCT)によりPHを誘導し、生存率、心臓カテーテルを用いた右室収縮期圧、肺組血管病変とCD68陽性マクロファージの浸潤を評価した。【結果】Ccr2(-/-)では野生型(WT)と比較し、MCT群の死亡率が有意に減少し(投与42日目55%vs. WT80%)、心臓カテーテルの右室収縮期圧は有意に低かった(32.9mmHg,vs.WT42.9)。SuHx群では右室収縮期圧に有意差は認めなかった(63.4mmHg,vs.WT66.7)。肺組織病変は、SuHx群の末梢肺動脈の閉塞病変数が減少し(11.6%,vs.WT16.5)、MCT群の中膜肥厚割合が軽減した(7.7%, vs. WT16.5)。末梢肺動脈周囲への血管あたりのCD68陽性細胞数は、SuHx、MCT群ともに有意に減少した(SuHx:0.31,vs.WT0.82、MCT:3.1,vs.WT4.5)。【結語】MCP1/CCR2経路の抑制により、PHラットモデルの血行動態と血管病変が軽減した。CCR2は炎症性細胞遊走の機序を介して、PAHの血管病変形成に関与していると考えられ、新しい治療ターゲットとなる可能性が示唆された。