[OR29-3] 治療方針の決定に覚醒負荷が有用だった肺動脈性肺高血圧症の2例
Keywords:肺動脈性肺高血圧, Ca拮抗薬, 覚醒負荷
【背景】覚醒により急激に肺動脈圧(PAp)が上昇し、急性血管反応性試験陽性でCa拮抗薬が著効した肺動脈性肺高血圧(PAH)の2例を経験したので報告する。【症例1】発達障害の10歳男児。経過中に運動後の失神を1回認めた。7歳時に学校心臓検診を契機にPAHと診断された。心エコーでは等圧の肺高血圧を認めたが、静脈麻酔による鎮静下の心臓カテーテル検査では、PAp=47/17(29)mmHgと想定外に低かった。9歳時のカテーテル検査中に自然覚醒し、平均PApが35→50mmHgまで上昇した。10歳時のカテーテル検査中に故意に覚醒させると、PApは体血圧と等圧まで上昇した。覚醒によるPApの上昇は一酸化窒素(NO)吸入により抑制され、急性肺血管反応性試験陽性と判断しCa拮抗薬(Nifedipine)を開始した。その後、症状、心電図および心エコー所見は劇的に改善した。【症例2】既往歴のない5歳女児。階段を昇った際に失神するエピソードが2回あった。その後、運動時の易疲労感、チアノーゼ、末梢冷感を認めるようになり、特発性肺動脈性肺高血圧と診断された。心エコーでは等圧のPAHを認めたが、心臓カテーテル検査では正常範囲だった。症例1と同様に覚醒させたところPApが体血圧と等圧まで上昇し、NO吸入によりPAp上昇は抑制された。Ca拮抗薬とRiociguatの内服を開始し、症状の改善を認め、2回目のカテーテル検査では覚醒時の圧上昇が抑制された。【考察】急性肺血管反応性試験陽性の症例では失神が多いことが報告されている。この機序は明らかになっていないが、血管の攣縮による急激な肺動脈圧上昇が病態に関与している可能性がある。今回の2症例も失神を認めること、覚醒により急激にPApが上昇していることから、同様の病態を推察している。【結論】失神を認める症例、普段の症状、身体所見やエコー所見とカテーテル所見に乖離がある症例では覚醒時の圧測定、急性肺血管反応性試験が治療方針の決定に有用である。