[OR3-1] Marfan症候群遺伝学的検査と臨床所見に関する探索的検討
Keywords:Marfan症候群, 遺伝子検査, アンギオテンシン受容体拮抗薬
【緒言】2016年に保険収載されたFBN1遺伝子検査はMarfan症候群(MFS)の診断において大きな比重を占めるが、遺伝子型と表現型の相関は不明な点が多い。MFSを疑い遺伝子検査を施行した自験12例について遺伝子型と臨床所見の相関を探索的に検討した。
【対象と方法】2020年1月から10月にFBN1遺伝子解析をかずさDNA研究所に依頼した自験12例について、遺伝子型と臨床像、特に大動脈基部拡大およびARBの効果を比較検討した。
【結果】7例にFBN1変異を認めた。FBN1変異のない5例中、1例にMYLK、FBN2変異を、他の1例にTGFB2変異を認めた。改訂Ghent基準を満たした症例は6例で、FBN1変異を有するにも関わらず1例は基準を満たさなかった。12歳時にAVRを要した重症早発例で既報変異[IVS27-2G>A]を認め、Exon 24-32の異常やExon25-36、43-49内でのCysteine残基関連異常が重症早期発症型であるという従来報告と一致した。大動脈基部径はFBN1変異有群(n=7)で2.35(0.1~7.42)SD、無群(n=5)で0.13(-0.02~3.09)SDと変異による差はなかった。ARBは大動脈基部拡大や中等度大動脈弁逆流を有する6例で開始され、FBN1変異有群(n=3)は無し群(n=3)に比しValsalva洞(SoV)拡大速度が低値であった(0.17(-0.01~0.09)vs 0.66(0.52~0.81)SD/年)。
【考察】MFSは多彩な表現型を呈し診断に迷う症例が多く、遺伝子検査は診断に大きな威力を発揮した。重症早発例で認めた変異[IVS27-2G>A]は、splicing異常を惹起しcb-EGF領域のExon27を欠損させ優性阻害を生じたと推測した。FBN1変異は診断時のSoV径と相関しなかったが、ARBはFBN1変異群で有意にSoV拡大速度を抑制した可能性がある。これはARBのSoV拡大抑制効果が単純な血圧降下にとどまらないTGFβsignaling抑制効果を反映したためかもしれない。
【結論】FBN1遺伝子検査はMFS診断に役立ち、リスク層別化や治療方針選定・効果判定など一部の表現型予測にも有用な可能性がある。
【対象と方法】2020年1月から10月にFBN1遺伝子解析をかずさDNA研究所に依頼した自験12例について、遺伝子型と臨床像、特に大動脈基部拡大およびARBの効果を比較検討した。
【結果】7例にFBN1変異を認めた。FBN1変異のない5例中、1例にMYLK、FBN2変異を、他の1例にTGFB2変異を認めた。改訂Ghent基準を満たした症例は6例で、FBN1変異を有するにも関わらず1例は基準を満たさなかった。12歳時にAVRを要した重症早発例で既報変異[IVS27-2G>A]を認め、Exon 24-32の異常やExon25-36、43-49内でのCysteine残基関連異常が重症早期発症型であるという従来報告と一致した。大動脈基部径はFBN1変異有群(n=7)で2.35(0.1~7.42)SD、無群(n=5)で0.13(-0.02~3.09)SDと変異による差はなかった。ARBは大動脈基部拡大や中等度大動脈弁逆流を有する6例で開始され、FBN1変異有群(n=3)は無し群(n=3)に比しValsalva洞(SoV)拡大速度が低値であった(0.17(-0.01~0.09)vs 0.66(0.52~0.81)SD/年)。
【考察】MFSは多彩な表現型を呈し診断に迷う症例が多く、遺伝子検査は診断に大きな威力を発揮した。重症早発例で認めた変異[IVS27-2G>A]は、splicing異常を惹起しcb-EGF領域のExon27を欠損させ優性阻害を生じたと推測した。FBN1変異は診断時のSoV径と相関しなかったが、ARBはFBN1変異群で有意にSoV拡大速度を抑制した可能性がある。これはARBのSoV拡大抑制効果が単純な血圧降下にとどまらないTGFβsignaling抑制効果を反映したためかもしれない。
【結論】FBN1遺伝子検査はMFS診断に役立ち、リスク層別化や治療方針選定・効果判定など一部の表現型予測にも有用な可能性がある。