[OR30-1] 肺動脈性肺高血圧症における心電図R-R間隔変動係数の臨床的意義
Keywords:CVR-R, 自律神経機能, 交感神経
<背景>心血管系疾患では自律神経機能障害が合併し、予後と関連することが知られている。肺動脈性肺高血圧症(PAH)では交感神経の過緊張状態があるとされているが、自律神経機能と疾患重症度の関連については十分報告されていない。<目的>小児および若年成人期に発症した特発性および遺伝性PAHにおいて、心電図による自律神経機能評価を行い、その臨床的意義について検討した。<方法>当院で経過観察中の18例のPAH患者(年齢中央値26歳、5-35歳)に対し、安静時心電図におけるR-R間隔変動係数(CVR-R)を測定した。過去の報告にある年齢別のCVR-R下限値を下回った症例と正常範囲であった症例の2群(低下群 vs 正常群)に分け、疾患重症度との関連を検討した。<結果>18例中6例(33%)が低下群であった(低下群 vs 正常群 CV中央値1.9 vs 4.9%)。低下群と正常群で検査時年齢に有意差はなかったが(中央値 28 vs 22歳)、低下群の方が診断からの治療歴が長かった(中央値 20 vs 11年間)。低下群は正常群に比してBNP値は有意に高値であり(中央値 44 vs 9pg/ml)、心拍数は高い傾向を示した(中央値 83 vs 69/分)。また、肺循環動態においても低下群が正常群に比して平均肺動脈圧が高く(中央値65.5 vs 42.5mmHg)、肺血管抵抗値が高く(中央値11.4 vs 8.6Wood・m2)、心係数が低い傾向があった(3.8 vs 4.0l/min/m2)。経過観察中に心不全入院を経験した症例は2例で、共に低下群であった。<結論>PAH患者における疾患重症度とCVR-Rは関連しており、自律神経機能異常が病態に関与していることが示唆された。