[OR30-2] 門脈肺高血圧に対する肝移植の中期的効果
キーワード:門脈肺高血圧, 肝移植, 予後
【背景】門脈肺高血圧は肝疾患が原因となる肺動脈性肺高血圧である。特発性肺動脈性肺高血圧に比べ予後不良で、過去報告では3年生存率が60%に満たない。原因となる肝疾患の治療無しでは肺高血圧の改善は期待できず、肝移植の適応となる。 【目的】今回我々は当院で肝移植を施行した門脈肺高血圧患者の肝移植前後のカテーテル検査データを比較し、肺高血圧の改善に寄与した因子について中期的経過で検討し、今後の治療方針について考察した。 【結果】過去、門脈肺高血圧と診断した42症例について心臓カテーテル検査を施行した。その中で、肝移植前後のデータが当院に存在し、心疾患含めた他疾患合併例を除外した11症例(胆道閉鎖 8例、門脈低(無)形成 3例、男女比は1:10)について移植前後のデータを解析した。移植前、1年後、3年後において、平均肺動脈圧は45.3±7.3、33.3±8.1、33.8±15.7mmHgと25.4%の低下を認めた。肺血管抵抗、心係数、肺体血圧比、右室拡張末期圧、BNP値などについても解析した結果、移植1年後の肺体血圧比、移植1、3年後の右室拡張末期圧と心係数のみ有意に改善した。 【考察】以上の結果から、門脈肺高血圧における肝移植の効果は、心係数低下による肺動脈圧低下、更には右心負担軽減が機序として考えられた。肺血管抵抗については一定の低下傾向を認めたが、有意な差を認めなかったことから、肝移植は肺血管抵抗上昇抑制効果を有するが、有意に低下させる効果に乏しい可能性が示唆された。したがって、肺高血圧治療薬は肝移植後も長期に内服することが必要である。