[OR30-3] 血管輪の病型による臨床的特徴の検討
Keywords:血管輪, 重複大動脈弓, 後食道大動脈
【背景】血管輪の各病型の臨床的特徴を統計学的に比較検討した報告はない. 【目的】血管輪の病型による臨床的特徴の相違を検証すること. 【方法】重複大動脈弓を1型, 右大動脈弓, 左鎖骨下動脈起始異常, 左動脈管(索)を2型, 左下行大動脈(後食道大動脈)を伴う右大動脈弓を3型, 右大動脈弓(鏡像分枝), 左動脈管(索)を4型と定義した. 2010年3月~2020年12月に当院に受診し,血管輪と診断した症例を対象に,後方視的に診療録を調査した.血管輪による症状を慢性の咳嗽や喘鳴, 嚥下障害と定義した. 各病型の症状出現, 外科的介入の有無および時期, 性別, 胎児診断, 心疾患の合併, 染色体異常や奇形症候群合併の有無を調べ検証した. 【結果】血管輪の症例は全体で47例. 1型は18例, 2型は 15例, 3型は 8例, 4型は6例であった. 胎児診断例は13例(28%)であった. 3型では8例中5例で22q11.2欠失症候群を合併していた. 生後日数を時間変数とする症状出現回避率に関しては, 1型, 3型で生後約300日の回避率が20%と, 有意に早期であった. 特に1型では症状出現回避率が50%に達するのが生後49日で, 3型の生後166日と比較しより早期であった. 外科的介入回避率は, 病型間で差が見られなかった. 症状出現リスクに関する因子として, 血管輪の病型が挙げられた(4型に対する1型のハザード比 10.3, 95%CI 1.2-86.8. P=0.03). 【考察】血管輪の病型は, 症状出現を予測する因子である. 特に1型は有意に症状出現のリスクが高く, 気管および食道を全周に渡り高圧の大動脈が囲む形態が他の病型との違いの要因と考えられる. 1型に順じて3型で症状出現が早期なのも, 食道後部を大動脈が走行し, 気管および食道の約3/4周に渡り大動脈が囲むためと考えられる. 【結論】1型, 3型の症例は症状出現が早期のため, より慎重なフォローが必要である.