[OR30-6] 超音波speckle tracking法を用いた波動解析法による肺動脈閉塞度の非侵襲的評価の検討
キーワード:肺高血圧, 位相角, speckle tracking法
【背景】肺高血圧の診療において肺小動脈の閉塞性病変の定量的評価は重要だが確立されていない。理論上、波動現象の2変数(圧力と流速)の位相差は位相角θで表され、動脈脈管の末梢の閉塞病変を反映する。我々は圧―流速同時測定ワイヤーにより位相角θを算出し末梢肺動脈の閉塞度を反映していることを報告してきた。さらに圧力データが血管内径データに置換しうることを確認してきた。【目的】超音波Speckle tracking法を用いて、肺動脈血流速度と血管内径の位相差により位相角θを算出し、肺動脈閉塞度を非侵襲的に評価しうるか否かを検討することである。【方法】心臓カテーテル検査を行った小児6例(VSD2例、ASD1例、AVSD1例、KD2例)で主肺動脈長軸断面像にてパルスドプラ法にて肺動脈血流速度を、 Speckle tracking法による肺動脈壁内径を計測し、その位相角θを算出した。使用機種はキャノンメディカル社 Artida。これらの位相角θと心臓カテーテル検査の従来の各指標(平均肺動脈圧(mPAp)、肺血管抵抗(Rp)、transpulmonary pressure gradient; TPG, 肺対血流比(Qp/Qs)、AcT/ET)を比較検討した。【結果】位相角θはmPApとr=-0.68, Rpとr=-0.57, Qp/Qsとr=-0.88, r=-0.82の負の相関を認めた。一方、AcT/ETとは有意な相関は認めなかった。(r=0.09) 【考察】非侵襲的に算出した位相角θは肺動脈の血管閉塞度を反映していると考えられるが、肺血流量にも影響を受けると考えられた。また一部に心拍動に伴う肺動脈の位置移動(血管揺動)の影響を受け、データの再現性に乏しい症例が認められる。【結語】本法は新たな肺動脈閉塞度の非侵襲的評価法として有用である可能性が示された。今後さらなる検討が必要である。