[OR31-1] 心筋ミトコンドリアを標的としたリポソーム製剤の開発研究
Keywords:心筋ミトコンドリア, リポソーム製剤, Seahorse XF Analyzer
【背景】既存の医薬品以外で,様々な製剤,天然化合物,細胞や分子による心筋虚血やアントラサイクリン心筋傷害などへの治療の可能性が報告されている.近年は,リポソームなどのDrug Delivery Systemによってより効率的・選択的に心筋細胞へ薬剤を送達できると考えられ,研究がすすんでいる.【方法】抗酸化作用を有する天然ポリフェノール化合物レスベラトロール(Resveratrol; R)を,北海道大学大学院薬学研究院で開発されたMITO-PorterやMultifunctional envelope-type nano device for pancreatic β cells(β-MEND)で封入したリポソーム製剤を調製した.ラット心筋細胞由来のH9c2細胞をモデルとし,細胞内へのリポソームの取込みを蛍光活性化セルソーター(Fluorescence-activated cell sorter; FACS)と共焦点レーザー顕微鏡(Confocal laser scanning microscope; CLSM)で検討し,Agilent社のSeahorse XF Analyzerで測定した細胞の酸素消費量から算出されるミトコンドリア呼吸能のパラメータの変化を比較した. 【結果】H9c2細胞内へのリポソームの取込みは,FACS・CLSMいずれにおいても対照やMITO-Porterよりもβ-MENDがより効率的であった.ミトコンドリア呼吸能については,対照やリポソームに搭載されていない同濃度のRのみと比較して,MITO-Porterとβ-MEND投与により,Maximal respirationとSpare respiratory capacityという最大酸素消費量を表すパラメータが有意に上昇した.【結語】Rを封入した当研究室のリポソーム製剤,特にβ-MENDは,効率よく心筋モデル細胞内へ取り込まれ,ミトコンドリア呼吸能を賦活した.本剤は,心筋ミトコンドリアを標的とした新たな治療薬の候補となり得る.