[OR31-2] ハイブリット経編シートを用いた実験的in situ組織再生大動脈壁の遠隔期特徴と伸張性
キーワード:再生医療, 手術材料, 基礎研究
【目的】小児心臓外科手術に用いるための理想的な手術材料として、組織再生を応用する試みが様々検討されて来たが満足な製品はない。我々はin situ組織再生をコンセプトとして、生分解性糸と非生分解性糸をハイブリッドさせた経編生地を、架橋ゼラチンでコーティングした構造の新規シート材料(OFT-G1)を開発した。本研究の目的は、OFT-G1の生分解性糸が完全に吸収された後の遠隔期において、再生血管壁の組織学的特徴と伸張性を評価することである。【方法】ビーグル犬下行大動脈血管壁に作製した欠損部をパッチ状のOFT-G1で補填埋植した。埋植後12ヶ月後、24ヶ月後、36ヶ月後に再生大動脈壁を摘出し、肉眼的及び病理組織学的観察、そして力学的測定を行った。生分解性糸は約24ヶ月後に分子量がほぼすべて消失し、非生分解性糸のみの経編生地は約4倍の面積まで伸張可能となるよう設計した。【結果】いずれの埋植期間においても再生血管壁に狭窄、破裂、瘤化及び出血の所見はなく、既製品に認める慢性炎症、壊死、石灰化、内膜過剰増殖等は見られなかった。OFT-G1を挟んで再生した内外膜組織は小血管を有するブリッジング組織で連通しており、吻合部周囲の自己組織へ連続して定着していた。24ヶ月以降の遠隔期では内皮細胞、平滑筋細胞、膠原線維、そして僅かな弾性線維の再生が進み成熟していた。生分解性糸は埋植後24ヶ月後にはほぼ分解していたが、再生血管壁は生理的負荷に耐え得る強度を維持していた。引張試験では興味ある伸張性を有していた。【結論】OFT-G1で誘導されたin situ組織再生大動脈壁は、遠隔期において血管修復に典型的な組織成熟と良好な機械的強度を示し、かつ伸張可能性を示した。Off-the-shelfの単純埋植のみで良好な血管壁再生を実現させる手術材料として、OFT-G1は小児先天性心疾患外科領域での有用な選択肢となると示唆された。現在、国内臨床試験が開始されており、承認申請が予定されている。