The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

心血管発生・基礎研究

デジタルオーラルI(OR31)
心血管発生・基礎研究

指定討論者:横山 詩子(東京医科大学)
指定討論者:南沢 享(東京慈恵会医科大学細胞生理学講座)

[OR31-3] SM22α発現細胞特異的低酸素誘導因子安定化は血管新生を促進し高濃度酸素誘発性肺障害および続発性肺高血圧を緩和する

伊藤 怜司1,2, Elizabeth Barnes1, Xibing Che1, Cristina Alvira1, David Cornfield1 (1.スタンフォード大学 小児科 呼吸器部門, 2.東京慈恵会医科大学 小児科学講座)

Keywords:低酸素誘発性因子, 血管新生, 気管支肺異形成

【背景】新生児医療の進歩に伴い新生児死亡率は劇的に改善されたが、気管支肺異形成(BPD)等の後遺症により長期の医療サポートを必要とすることがある。BPDは肺胞形成と肺微小循環形成の破綻を特徴とする肺成熟障害であり、肺高血圧合併症例では死亡率5割と高率である。高濃度酸素投与や長期人工換気療法がBPDの病因とされているが未だ不明なことが多い。
【目的】高濃度酸素暴露マウスにおけるSM22α細胞特異的低酸素誘導因子(HIF)安定化の役割を解明する。
【方法】遺伝子改変マウスをCre-lox Pシステムを用いてSM22α細胞特異的にプロリル水酸化酵素(PHD)1および2をノックアウトさせて作成した。モデル作成は出生日より新生児マウスを80%酸素に2週間暴露させ、一部は遠隔期評価のため生後12週まで大気下で回復させた。方法は肺構造評価とin situ hybridization(ISH)を行い標的因子の増幅度を対照および暴露環境間で比較した。管腔形成能は対照から分離した肺血管内皮細胞と各遺伝子型より分離した肺血管平滑筋細胞を共培養し行った。肺動脈圧は生後12週時にカテーテルで右室圧を計測した。
【結果】SM22α細胞特異的HIF安定化群(S群)は対照と比較して高濃度酸素誘発性肺障害を緩和し、微小血管数の増加を認めた。大気下でも対照と比し微小血管数の増加を認めたが、肺構造に差を認めなかった。ISHではS群は暴露環境に関わらず対照と比べ内皮細胞増殖とSM22α細胞はangiopoietin-2(Ang2)の増幅を認めた。S群を用いた管腔形成能は内皮細胞を有意に伸長させ、Ang-2添加もしくは抑制薬添加により両群間の差は相殺された。右室圧は高濃度酸素暴露により両群共に上昇したがS群では緩和され、急性低酸素負荷による右室圧上昇を抑制した。
【結論】SM22α細胞特異的HIF安定化はAng2を介した血管新生促進により高濃度酸素誘発性肺障害および続発性肺高血圧を緩和し、BPDに対する治療標的となる可能性がある。