[OR31-4] 心室圧最大変化率‐拡張末期容積関係から導かれる心室・動脈カップリング
キーワード:V-A coupling, dog, dP/dtmax-EDV
【背景】収縮末期圧-容積関係(ESPVR)、preload-recruitable stroke work index(PRSW index)、dP/dtmax-EDV関係の傾きは負荷条件を加味した心収縮性の指標として有用である。一方、実際の生体においては、心臓はポンプ単独として機能するわけではなく、後負荷との整合性(V-A coupling)を考えなければ実際の臨床での有用性は乏しくなる。前述のESPVRとPRSW indexは既にその値を用いたV-A couplingの方法が報告されているが、dP/dtmax-EDV関係においては未だ確立していない。【目的】1)正常犬においてdP/dtmax-EDV関係から我々が理論的に導き出したV-A couplingの指標(M・tmax/Ea)が従来の指標であるEmax/Eaと相関するかを調べる。2)心不全犬においてEmax/Eaと M・tmax/Eaとの関係を調べる。【方法】成犬20頭の心臓カテーテルデータから解析ソフトWinPVAN-3.5.10を用いてPV loopを作成する。正常犬の血行動態を測定後、Angiotensin2 4日間投与+頻脈ペーシング48時間により作られた心不全犬のデータを用いて、それぞれを正常犬データ、心不全犬データとして統計学的に比較検討を行う。【結果】正常犬、心不全犬ともにM・tmax/EaはEmax/Eaと線形に有意な正の相関を示した(正常:R2 = 0.7551、p < 0.0001、心不全:R2=0.2774、p=0.0170)。さらに心拍数、前負荷を独立変数に加え多変量解析すると心拍数はEmax/Eaに加え、M・tmax/Eaの有意な規定因子であった。重要なことに、心拍数も加味した多変量解析では、M・tmax/Ea-Emax/Ea関係は心不全において正常心に比して有意に上方にシフトし(p < 0.05)、より鋭敏に心不全のAfterload Mismatchをとらえた。【考察】dP/dtmax-EDV関係より導かれるM・tmax/Eaを用いてV-A couplingの評価が可能であった。M・tmax/EaによるV-A couplingは心拍数変化の影響も加味しており、心不全における病態変化をより鋭敏にとらえることが可能である。