The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

心血管発生・基礎研究

デジタルオーラルI(OR31)
心血管発生・基礎研究

指定討論者:横山 詩子(東京医科大学)
指定討論者:南沢 享(東京慈恵会医科大学細胞生理学講座)

[OR31-5] 新しい心収縮性の指標(Ees‘)の収縮末期Elastanceに対する優位性

竹蓋 清高1, 犬塚 亮2, 中川 良1, 植田 由依1, 籏 義仁1, 佐藤 有美1, 中西 敏雄1, 先崎 秀明1 (1.国際医療福祉大学成田病院 小児科, 2.東京大学 小児科)

Keywords:平均駆出圧容積関係, 収縮エラスタンス, MSW

【背景】平均駆出圧容積関係の収縮末期の直線(EMPVR)の傾きEes‘は、負荷条件を加味した心収縮性の指標であるPreload recruitable stroke workの傾き(Msw)を反映し、エラスタンスの要素も含んだ新しい心収縮性の指標である。しかしながら従来の収縮末期圧容積関係の傾き(Ees)との実臨床での差異、優越性に関しては明らかではない。
【方法】意識下成犬計49頭において、正常、高頻度Pacingによる慢性心不全、Angiotensin+Pacingによる拡張不全、Dobutamine負荷による急性の心収縮性変化時に心室圧容積関係を構築し、Ees‘とEesの違いに及ぼす因子、Ees‘とEesの心収縮性変化に対する感度を、心拍数、前負荷、血圧、一回拍出量(SV)を加味して多変量解析で検討した。Ees’はMsw/SVで算出、Eesは収縮末期点のPerpendicular Regressionで算出した。
【結果】どの状況下でもEes‘はEesと有意な正の相関を示したが(r=0.72、p<0.001)、正常心においてはEes‘はEes以外にSVが有意な規定因子であった(両者でr=0.87)。心不全進行に伴いSVに加え、拡張末期容積(EDV)も重要な規定因子となり、同じEesでもEDV上昇、SV低下に伴いEes’は低値となり(r=0.96)、心不全の病態変化をより鋭敏に捉えることが示された。Dobutamine負荷においてはEes’とEesの差は容量依存に有意に低下し、Ees’が低用量での収縮性の変化をより鋭敏に捉えることが示された。
【考察】EMPVRの概念に基づく収縮性の指標Ees‘はMswの安定性を背景に正確に算出可能な上に、Eesに比し心不全や収縮性変化の病態をより鋭敏に捉えることができる優れた指標であると考えられた。今後、臨床応用の拡大のためにより簡便なEes’算出の方法論の展開を試みたい。