[OR33-1] 川崎病急性期におけるQT dispersionとQT peak to end/QTに対する心拍数の影響および遠隔期所見の検討
キーワード:川崎病, 心電図, QTp-e/QT
【背景】QT dispersion(QTd)やQT peak to end/QT (QTp-e/QT)の延長は心筋の再分極異常を反映し, 川崎病(KD)でも報告がある. 心拍数の影響はないとされるが, 小児は興奮等により心拍数が容易に上昇する.また急性期KDの多くに無症候性心筋炎を伴うとされ, 心筋障害によるQTdとQTp-e/QT延長が遠隔期に残存する可能性がある.【目的】KD児のQTdとQTp-e/QTへの心拍数の影響と遠隔期の心電図異常を評価すること.【方法】対象はKD群76例と非KD群80例. QTd, QTp-e/QT(V5誘導)と各々をFridericia法で心拍補正したQTcfd, QTp-e/QTcfをKD治療前(A), 発症後12か月以下(B), 13か月以上(C)群と非KD群で比較した. またA群を心拍数140bpm以上(A≧140)と未満(A<140)群に分類し, 2群間で比較した.【結果】QTd, QTcfd, QTp-e/QT, QTp-e/QTcfはA群:44.4[35.0, 52.6]ms, 57.2[48.2, 66.5]ms, 0.283±0.05, 0.214±0.04, 非KD:30.0[25.1, 39.4]ms, 39.4[32.6, 47.8]ms, 0.205±0.03, 0.165±0.03とすべてA群で有意な延長を認めた.A≧140とA<140群間ではQTdとQTp-e/QTに有意差を認めた(35.8[28.5, 46.3] vs 49.2[40.7, 56.7]ms, P=0.003, 0.314±0.05 vs 0.259±0.05, P<0.001). 一方, QTcfdとQTp-e/QTcfに有意差はなかった(54.0[41.4, 64.7] vs 59.2[51.2,71.4]ms, P=0.232, 0.221±0.04 vs 0.209±0.03, P=0.128). 検査所見や治療内容に差はなかった.遠隔期の評価ではQTcfdとQTp-e/QTcfはB群(39.4[31.4, 54.6]ms, 0.193±0.03), C群(38.2[32.3, 46.6]ms, 0.191±0.03)ともA群に対して有意に短縮し, B, C群間では有意差はなかった.またQTp-e/QTcf はB, C群とも非KD群に対し有意な延長を認めた.【考察】心拍数の多い小児期はQTdとQTp-e/QTの評価には心拍補正が必要となる.遠隔期のQTcfd, QTp-e/QTcf延長は冠動脈病変のない症例にも認められ, 心筋障害の影響が示唆された. これらは不整脈発生の危険因子とされ, 注意が必要と考えられる.