[OR33-2] Liptom分類を用いた対側バルサルバ洞からの冠動脈起始8例の検討
キーワード:冠動脈起始異常, Liptom分類, 突然死
【背景】先天性冠動脈異常は小児において突然死を起こす疾患の一つで、冠動脈起始異常は成人例では0.5~1%の頻度と報告されている。成人では突然死のリスクを考慮して症状や血管走行に従った治療指針が発表されているが、小児では臨床経過や転帰が不明でまだ確立していない。【目的】小児の単一冠動脈および冠動脈同一冠尖部起始症例の走行と臨床経過、転帰の関係性について検討すること【方法】名古屋第一赤十字病院、中京病院の2施設の小児循環器科に2012年1月から2021年2月までの期間で受診した0~15歳の小児のうち先天性心奇形を伴わない単一冠動脈および同一冠尖部起始と診断された8症例(年齢中央値:8.5歳 男女比:3:1)について、Liptom分類を用いて症例を分け、診療録より後方視的に検討した。【結果】全症例で超音波検査だけでなく造影CT検査又は冠動脈造影検査で診断を確定した。5/8症例(年齢中央値:14歳 男女比:4:1)がLipton分類でR2-Bに分類される血管走行だった。うち3/5症例(年齢中央値:14歳 男女比:2:1)で症状を認め、2/3症例(年齢中央値:14歳 男女比:1:1)で心電図変化を認めた。3症例とも手術にて症状消失し、無症状の1症例でも手術を行い、残り1症例でも手術方針となった。ほかの血管走行ではL2-Aを1症例、L2-Bを2症例で認め、いずれも外科的介入せず現在まで無症状で経過している。【考察】R2-Bの血管走行で有害事象が多く報告されている理由として、左の冠動脈が大動脈および肺動脈で冠動脈が挟まれることで血流が阻害されるために他の走行よりも虚血症状を呈しやすいことが考えられた。【結論】左冠動脈が大動脈-肺動脈間を走行するLiptom分類 R2-Bは成人と同様に心筋虚血のリスクが高く、早期の治療介入をすべきである。その治療介入の判断に超音波検査だけでは不十分であり、造影CT検査又は冠動脈造影検査が必要である。