[OR33-3] 川崎病免疫グロブリン静注不応例におけるシクロスポリンA投与前後での末梢血免疫担当細胞の動態解析
キーワード:カルシニューリン阻害薬, Ca2+/NFAT経路, 免疫抑制
【背景】シクロスポリンA(CsA)は2020年に川崎病に対して保険収載された。CsAはCa2+/NFAT経路に作用し主にT細胞の活性化を抑制すると考えられているが、川崎病患者における知見は少ない。【方法】2013-2020年に当院小児科で入院加療を行った免疫グロブリン静注(IVIG)不応川崎病患者のうち、追加治療としてCsAを投与した症例の末梢血単核球プロファイルおよび臨床学的データを後方視的に解析した。またコントロール群としてインフリキシマブ(IFX)投与例に対し同様の解析を行った。【結果】川崎病入院全295例中18例(6%)にCsAが投与された。データ解析可能な症例は16例(男児12例、年齢23[2-54]か月)であった。CsAは第14(9-22)病日に投与開始され、計9(4-18)日間使用された。全例経口投与され、最大投与量4(4-8)mg/kg/日、トラフ値65.6(8.2-122.2)ng/mLだった。3例にCsA開始前から冠動脈病変(CAL)をみとめ、2例は1年以内に退縮した。CsA開始後に全例解熱し、CALが増悪した症例はなかった。フローサイトメトリー法による末梢血単核球の細胞表面抗原解析では、CsA投与後に活性化CD4+T細胞(CD4+HLA-DR+T細胞)および活性化CD8+T細胞(CD8+HLA-DR+T細胞)の割合が有意に低下した(それぞれ11→9%[p=0.031]、38→30%[p=0.023])。活性化CD14+単球(CD14+CD16+単球)はCsA投与前後で有意な変化をみとめなかった(18→16%[p=0.923])。コントロール群(n=61)では活性化CD4+T細胞、CD8+T細胞、およびCD14+単球のいずれもIFX投与前後で有意な変化をみとめなかった。【考察】川崎病においてもCsAはT細胞の活性化を抑制し抗炎症作用を示していることが示唆された。先行研究において川崎病IVIG不応に活性化T細胞の関与が示唆されており、CsAは病態に即した追加治療法であると考えられた。