[OR33-4] ガンマグロブリン不応川崎病に対するインフリキシマブの神経学的中長期予後
キーワード:川崎病, インフリキシマブ, 神経学的予後
【背景】IFXは、IVIG不応川崎病に対する重要な治療薬の一つであり、県下統一プロトコールである山梨川崎病治療(YKD)プロトコールでは、2006年からIFX治療を行っている。他のIFX適応疾患では成人における脱髄性疾患発症の可能性が報告されており、小児でのIFX治療による髄鞘化遅延や脱髄性疾患発症の可能性も懸念されているが、これまでに小児に対する単回使用例の長期的な神経学的予後について詳細な検討はされていない。【目的】IFX治療例における神経学的中長期予後を明らかにすること。【方法】対象は2006年12月から2017年8月までにYKDプロトコールにおいてIFX 治療(5 mg/kg、単回投与)を受けた 36例。精神発達評価として知能検査(WISC-IV)を行い、同時期に髄鞘化と脱髄の評価として頭部MRI検査を施行した。全例親の同意を得て、6歳以上かつIFX後1年以上経過した時点で検査を行った。【結果】IFX治療時年齢は4か月~9歳1か月(中央値3歳5か月)。8例はIFX不応で血漿交換療法を追加した。IFX後の経過観察期間は2年6か月~14年2か月(中央値7年9か月)で、臨床的に精神運動発達遅滞や神経学的所見の異常はなかった。WISC-IVを施行した35例(男22例、女13例、検査時6~12歳)では、全検査IQ(FSIQ) 104.3±12.9、言語理解 102.2±12.5、知覚推理 104.4±16.0、ワーキングメモリー 101.3±15.0、処理速度 103.9±9.8と明らかな異常はなかった。頭部MRIを施行した34例(男21例、女13例、検査時6~16歳)のうちIFX不応の1例にT2およびFLAIRで白質に点状の高信号所見があり脱髄が否定できなかったが、髄鞘化は完成しており臨床的に脱髄を示唆する所見もなかった。【考察】今回の検討では、明らかな精神運動発達遅滞を来した例はなく、髄鞘化遅延や脱髄性疾患の発症もなかった。頭部MRIで異常所見を認めた1例は血漿交換療法を追加した重症例であり、IFXとの因果関係は不明であるが、今後も慎重な経過観察が必要と考えられた。