[OR37-6] 先天性心疾患に伴った三尖弁病変に対する形成術の成績
Keywords:三尖弁, 弁形成, 自己心膜
【目的】後天性心疾患における三尖弁病変に対する術式は,定型的なものが多くほぼ確立されたものとなっているが,先天性心疾患に伴う三尖弁病変は,先天的なものから他の術式に伴う二次的病変まで幅広く,さまざまな術式で対応する必要がある.当院では,新鮮自己心膜パッチ補填や,人工腱索なども積極的に用いて新生児期から介入を行ってきたが,これらの症例の遠隔期を含めた手術成績について検討した.【方法】対象は2009年から現在までの約10年間に, 15歳以下で三尖弁形成術を行った例とした.ただし単心室性心疾患の三尖弁,ccTGAの体心室の三尖弁,単純なcleft閉鎖やVSD閉鎖に併施した交連縫合,Ebstaein病に対する手術は除外した27例について検討した.基礎心疾患は,ASD 6例,AVSD 5例,VSD,DORV 各4例,他8例,三尖弁病変は,異形成11例,以前の手術や心カテ操作に伴う二次性 16例だった.【結果】観察期間は36.6±35.4ヵ月,手術時年齢は3.7±4.6歳,体重は13.9±11.3 kgで,手術時間381±112分,体外循環時間175±78分,大動脈遮断時間は109±5分だった.用いた術式は(重複あり),心膜補填13例(新鮮 12例,GA処理1例),人工腱索等の弁下構造に対する手技7例,二弁口化3例,交連縫合8例,弁輪縫縮4例(人工弁輪1例),乳頭筋縫合1例だった. 不整脈発作による入院死亡が1例,自宅での突然死が1例あった.術後の平均のTRは,直後0.8,1-3年0.9,4-6年1.0,7-10年0.8度で有意な悪化は認めず,三尖弁病変に対する再介入例はなかった.また,心膜を弁尖に補填した13例と使用しない14例の比較でも,術後TRの経過に明らかな差はなかった.【考察と結語】先天性心疾患に伴う三尖弁病変は複雑なものが多く,それに対応して様々な術式で対応する必要があったが,遠隔期も含め成績は満足できるものだった.とくに小児例の場合は成長を考慮する必要があるが,自己心膜補填の有無でも差は認めず,良好な成績だった.