[OR4-1] 重症先天性心疾患の胎児診断率の推移と胎児診断の有用性についての検討
キーワード:胎児診断, 先天性心疾患, ductal shock
【目的】新生児・乳児期早期に治療介入を要する重症先天性心疾患の胎児診断(Fetal diagnosis; FD)率の推移とFDの効果を検討する。【方法】当院で新生児期・乳児期早期に治療介入を要した完全大血管転位症(TGA)I型、総肺静脈還流異常症(TAPVC), 左心低形成症候群(HLHS)、大動脈縮窄/離断症(CoA/IAA)に関して、過去28年間を1期(1993-1999年)、2期(2000-2006年)、3期(2007-2013年)、4期(2014-2020年)に分け、FD率の推移と効果について診療録から後方視的に検討した。【結果】TGAI型(n=70)は19名(27%)がFDされ、FD率は1期 0%から4期 68%と経年的に増加した(p<0.0001)。TGA FD群はnon-FD群より心房中隔裂開術施行日齢は有意に早く(p<0.05)、前方視的に処置を行えた。HLHS (n=62)は30名(48%)がFDされ、FD率は1期 20%から経年的に増加し、4期は100%であった(p<0.0001)。HLHS FD群はnon-FD群に比較し、ductal shockが少なかった (FD 1/30 vs non FD 9/32, p<0.05)。CoA/IAA (n=105)のFD率も増加したが、4期でもFD率は29%と低かった。CoA/IAA FD群はductal shockはなかったが、non-FD群とductal shock発症率に差はなかった(FD 0/8 vs non-FD 13/97, p=0.59)。TAPVC(n=95)は4名(4%)がFDされ、1-3期ではFD例はなく、4期でもFD率は15%と低かった。【結論】TGAI型、HLHSではFD率は経年的に改善しており、FDによる前方視的な医療介入を可能にしていると考えられる。一方、CoA/IAA、TAPVCではFD率は依然低く、FD率増加のための新たな戦略が必要である。