[OR5-1] 在胎22週未満で診断される胎児先天性心疾患は増加している
キーワード:胎児診断, 先天性心疾患, 妊娠早期
【背景】近年、超音波検査機器の進歩やスクリーニング技術の向上により、早い妊娠週数での胎児先天性心疾患の診断が増えてきており、妊娠継続の判断にも影響が生じると考えられる。【目的】当院における妊娠22週未満での胎児先天性心疾患診断の現状と課題を知ること。【方法】2010-2014年 (前期) と、2016-2020年 (後期) における、当院の先天性心疾患診断時期および転記について、データベースから検討した。【結果】在胎22週未満の診断症例数は、前期:44/847例 (5.2%) から、後期:81/676例 (12.0%) と有意に増加していた (P<0.05)。後期の81症例のうち、心臓以外の先天性疾患や予後不良の染色体異常を合併していない55症例について転帰を検討したところ、人工妊娠中絶:16例 (29%)、子宮内胎児死亡:4例 (7%)、新生児死亡:4例 (7%)、長期生存:27例 (49%)、不明:4例 (7%) であった。疾患の種別による人工妊娠中絶の割合については、単心室疾患:9/24例 (38%)、二心室疾患:7/31例 (23%) と、単心室疾患が多い傾向であるものの有意差を認めなかった。【考察】妊娠22週未満での胎児先天性心疾患診断は経時的に増加していることが明らかになった。人工妊娠中絶を選択する割合は少なくないものの、妊娠を継続し長期生存する症例数はそれを上回っていた。二心室修復可能かは妊娠継続の判断と必ずしも関連しておらず、全身疾患の可能性など他の要素も影響している可能性がある。【結語】妊娠22週未満の胎児心疾患診断にあたっては、正確な形態診断に基づき予想される予後について可能な限り説明するとともに、心外合併症の可能性についても十分説明し、胎児の権利と両親の自己決定権に十分配慮した対応を行う必要がある。