[OR5-2] 宮崎県における重症先天性心疾患の胎児診断の現状と課題
キーワード:胎児診断, 胎児心エコー, 胎児心臓スクリーニング
【背景】宮崎県は陸の孤島と呼ばれ他県への新生児搬送に数時間を要する。さらに現時点では県内での新生児重症先天性心疾患の外科治療体制は十分でなく、多くを県外の手術施設に頼らざるを得ない。そのため本県における胎児診断の役割は重要であり、当院では2015年に胎児心エコー外来を開設し対応を強化した。【目的】当院における重症先天性心疾患児の胎児診断の現状を解析し、今後の課題を明らかにする。【方法】2010年1月から2020年12月に出生し、後に当院でフォローした重症先天性心疾患124例を対象として後方視的に胎児診断率、新生児搬送の回避率について検討した。ただし新生児期に介入を要しない弁膜症、VSD、ASD、PDAおよび13/18トリソミーは除いた。【結果】全胎児診断率は63/124例(51%)。各疾患別ではHLHS/HLHC 2/2例(100%)、他単心室系疾患 23/27例(85%)、TGA 5/11例(45%)、CoA/IAA 3/16例(19%)、cAVSD 5/15例(33%)、TAPVD 0/7例(0%)、TOF/PAVSD/DORV 19/36例(53%)、その他 6/10例(60%)であった。胎児心エコー外来開設前のA群と開設後のB群で比較すると胎児診断率はA群28/56例(50%)、B群35/68例(51%)で診断率の改善は見られなかった。新生児期に手術を要した症例はA群 30例、B群43例あり、そのうち当院で手術した症例はA群 4/30(13%)、B群 2/43(5%)、手術施設へ新生児搬送した症例はA群 21/30(70%)、B群の31/43(72%)で不変であった。一方で母体搬送により新生児搬送を回避できた症例はA群の5/30(17%)、B群の10/43(23%)と僅かながら増加していた。【考察/結論】胎児心エコー外来開設後に、母体搬送による新生児搬送の回避は見られている傾向にあるが、胎児診断率、死亡率の改善にまでは至っていない。一次施設から胎児心エコー外来に紹介された症例での診断見逃しはほぼなく、レベル1胎児心臓スクリーニングの実施やスクリーニング技術の向上について一次施設に向けて引き続き啓蒙する必要がある。