[OR5-3] 左室心筋緻密化障害における非緻密化層/緻密化層比(N/C比)は胎児期から出生後に増大する
Keywords:左室心筋緻密化障害, 胎児診断, N/C比
【背景】左室心筋緻密化障害(以下LVNC)では、形態的に診断がなされるが、胎児症例については診断基準が定まっていないため、管理と治療においてしばしば難渋する。【目的】胎児LVNCの診断に有用な指標を抽出すること。【方法】2010年から2016年に胎児心筋症の全国調査を行った。出生後心室壁の1区域以上にN/C比で2.0以上の肉柱形成を認め、深い間隙を伴うものをLVNCとした。胎児期ならびに出生後の臨床症状、心エコーデータを他の心筋症患者と合わせて後方視的に検討した。LVNC群で胎児初回受診時(中央値在胎30週)と最終受診時(中央値在胎36週)と出生時のN/C比を左室側壁と心尖部で測定した。【結果】LVNC患者は16例で、拡張型心筋症は15例、肥大型心筋症は7例であった。LVNCで胎内診断と出生後診断が一致するのは全体の56.3%と他の心筋症群に比べて低値であった。LVNCの50%に家族歴を認め、先天性心疾患合併例が50.6%と他の心筋症群に比べて有意に多かった。胎児期のN/C比は週数に応じて上昇し、出生後にさらに有意に上昇した (初診時 vs 出生時 左室側壁 1.6±0.1 vs 2.8±0.2、p = 0.007 ) 、心尖部 2.0±0.1 vs 3.2±0.2、p = 0.011 )。LVNCと胎児期に診断する指標として、初診時の心尖部N/C 比 ≧1.6 が最も有用な指標であった ( オッズ比 47.8、95%信頼区間 2.39-956.39、p = 0.0113 ) 。【考察】胎児LVNCのN/C比は週数が進むにつれて上昇し肉柱形成が著明となることが明らかとなり、胎児期の診断率の低値を反映していると思われた。また、通常の肉柱形成と緻密化は胎児期初期に起こるが、LVNCでは胎児期後期に肉柱形成が認められ、本疾患の病態を探る上で重要な所見と思われた。【結論】胎児期のLVNCの診断には、肉柱形成が初回受診時に明らかでなくとも経時的に追跡することが重要と思われた。