[OR7-2] 無脾症候群における手術危険因子とその改善策
キーワード:無脾症, 予後, CAVVR
【背景/目的】無脾症候群の多くは複雑心血管奇形を伴う機能的単心室(fSV)を呈し、Fontan手術を目指すが、死亡例は少なくない。外科治療症例の転帰から予後不良因子を検討し、その改善策を考察する。【方法】2004年から2021年2月に当院で外科治療介入したfSVの無脾症候群31症例(男児16例、右室型単心室28例、共通房室弁29例)の生存曲線を作成し、出生体重(中央値2.8kg);診断(肺動脈閉鎖13例、心外型総肺静脈還流異常(TAPVC)9例、 術前重度肺静脈狭窄(PVO)9例、共通房室弁逆流中等度以上(CAVVR)7例);初回手術時日齢(中央値40)・体重(中央値3.6kg)・術式(体肺シャント術(APS)16例、肺動脈絞扼術7例、両方向性Glenn手術(BDG)7例、房室弁形成術(CAVVP)1例、PVO解除・TAPVC修復術5例)と死亡との関連を検討した(観察期間中央値5.8年(1月ー17年)。【結果】累積生存率は1年が84%、3年が77%。BDGとFontan到達率は77%と55%。全死亡は7例(23%)、死亡月齢は中央値5ヵ月(1ー20ヵ月)、Stage1迄の在院死亡5例、BDG前の死亡4例、BDG後Fontan迄の死亡3例であり、Fontan後遠隔期死亡なし。主死因は低心拍出性心不全 6例、感染1例。単変量解析でPVO、CAVVR、日齢28未満手術介入、BDG前CAVVP、BDG前TAPVC修復術が有意な死亡関連因子であった(p<0.05)。【考察】近年、新生児期TAPVC修復回避目的にdraining vein stentingを導入し、2/2例でBDG後も生存している。2010年以降、術後心不全を懸念しAPSは生後1ヵ月以降、4kg前後で施行する方針とした。CAVVR症例では、早期のCAVVPやAPSを避けprimary BDG±CAVVP±TAPVC修復の治療戦略を開始した。【結語】 fSVの無脾症候群では、早期のTAPVC修復術やCAVVRの増悪を回避する治療戦略がその予後を改善する可能性がある。