[P1-1] 後天性von Willebrand病様の血液学的所見を呈した単心室の一例
Keywords:単心室, 後天性von Willebrand病, 出血傾向
【症例】在胎40週、出生体重 3034 gで出生。日齢0に啼泣時チアノーゼを認め、心エコーで単心室(両房室弁挿入)、肺動脈狭窄と診断。入院時APTT 59.2 sec(control: 28.9 sec)。PGE1製剤を投与せず動脈管は保たれSpO2 85%前後であり、日齢5に退院。日齢25にSpO2 60 %と低下し高次機関へ紹介。左側房室弁狭窄があり日齢29にBASを実施。日齢52に体肺動脈短絡術・動脈管切離術を実施。日齢71に当科へ転院、APTT 47.6 sec (control: 28.9 sec)であった。利尿剤、ジピリダモール、ワルファリン内服を継続し日齢74に退院。月齢6に心カテを実施し、両方向性グレン術・心房中隔欠損作成術を実施する方針となった。この際に生来APTTが持続的に延長していることに気づいた。それまでに出血傾向はみられなかったが、人工心肺を考慮して血液凝固系の精査を行った。結果、von Willebrand病(VWD)の診断基準は満たさないがvon Willebrand因子(VWF)抗原・活性比低値を認め、ADAMS13活性は高値であった。ADAMS13はVWFの特異的切断酵素であり、ずり応力が働くと活性が亢進する。本患者はグレン手術前には肺動脈狭窄、動脈管、短絡術、左側房室弁狭窄、卵円孔狭小化がみられ、これらによる血流加速でADAMS13 活性が亢進していると考えた。このため、協議の上で安全性を考慮しVWDに準じてコンファクトFを術中から開始し術後6日まで続け、周術期に出血傾向は認めなかった。その後、月齢11にAPTT、VWF抗原・活性比の正常化を認めた。【考察】VWDはVWFの質的または量的異常により引き起こされる疾患であり、VWF遺伝子異常に伴う症例が95 %を占めるが、自己抗体や弁膜症が原因となり後天性VWDを誘発することがある。血流加速を伴う心疾患においてAPTTが持続的に延長している場合は後天性VWDを念頭に精査を行い、術中術後の出血に備えて凝固因子製剤等を準備する必要があると考えられた。