[P1-4] 当科における右室二腔症の経験
Keywords:右室二腔症, 心室中隔欠損, 心臓カテーテル検査
【諸言】右室二腔症(TCRV)は、異常筋束が発達し圧較差を生じる。膜様部心室中隔欠損症(VSD)の合併が多く、原則として進行性である。一般的な手術適応と比較し、本症例の経過と方針につき報告する。【症例】現在6歳男児。生後5か月時に心雑音を指摘され近医を受診、ファロー四徴(TOF)疑いで当科を紹介。心エコーでVSDは膜様部であるが比較的下方に位置し、漏斗部中隔の前方偏位を伴わず、右室流出路下端の異常筋束によるTCRVと判断した。VSD流速は5.29m/s、TCRV流速は4.33m/sであった。なおVSD流速はビームの角度が悪くTCRV流速と厳密に区別できず、心室間圧較差と右室内圧較差の評価が困難であった。生後6か月以降はVSD流速4m/s台、TCRV流速3.71m/sとやや低下し肺高血圧が否定できず、11か月時にはLVDdは129% of Normalと左室容量負荷の増加を認めた。TOF類似の血行動態であることから見逃しを避けるため1歳1か月時に心カテを施行。左室収縮期圧87mmHg、右室収縮期高圧部39mmHg低圧部31mmHg(圧較差は8mmHg)、肺高血圧を認めず、TCRVの進行に注意し経過観察となった。無症状で経過したが、5歳時にVSD流速4m/s台、TCRV速度は4.55m/sとやや進行し、右室高圧部の中隔の変形がみられ圧上昇が示唆されたため、心カテを実施。しかし実際の右室内圧較差は7mmHgとTCRVの進行はなかった。小児では右室内圧較差が30-50mmHg以上が手術適応と考えられており、症状、TCRVの進行に注意し経過観察とした。【考察】TCRV圧較差は年に1.5-6mmHg程度で徐々に進行する。またその形態から心エコーで正確な圧較差を評価することが困難なこともあり、気がつけば異常筋束の肥大や心内膜繊維化が進行し、手術時に切除が難しく残存病変を残す懸念もある。従ってより早期に修復術を行うことも考慮され、本症例では小学校低学年での手術介入を検討している。なお、実際に早期介入が予後に寄与するかは今後の症例の集積が必要である。