[P12-2] 右冠動脈起始異常を見逃さないための,左冠動脈起始所見
Keywords:右冠動脈起始異常, 心臓超音波検査, 学校心臓検診
【背景】冠動脈起始異常の診断は重要であるが,右冠動脈(RCA)の起始は同定しにくい場合がある.愛媛県南宇和郡愛南町の小・中学校1年生全員を対象に,心臓超音波検査を施行しRCA起始異常を1.4%に認め,その有用性についてすでに報告した(JSPCCS 2019).RCA起始異常の症例においては左冠動脈(LCA)が右寄りから起始している場合があり,特徴的な所見かどうかを検証した.【目的】LCA起始が右寄りであることとRCA起始異常に関連があるか検討する.【対象と方法】対象は愛南町の小中学校1年生全員.2017年から2020年に愛南町で心臓超音波検査を受けた小中学校1年生770名.先天性心疾患のスクリーニングを行うとともに,RCAとLCAが,大動脈短軸像の何時方向から起始するかを記録した.RCAが12時半より左から起始する例をRCA起始異常とし,LCA起始の分布に差があるかどうかを調べた.【結果】LCAが2時から起始している例は3例あり,うち1例(33.3%)がRCA起始異常であった.以下同様に,RCA起始異常は2時半の5例中1例(20.0%),3時の118例中4例(3.4%),3時半の181例中3例(1.7%),4時の404例中2例(0.5%)であった.LCA起始の平均値は,RCA起始正常例3.77時,RCA起始異常例3.18時,平均値差は0.586(0.311-0.861,95%CI)と,RCA起始異常例ではLCA起始は有意に右寄りであった.なお,LCA-RCA間距離(時)は,RCA起始正常例で4.97,異常例で1.86と,異常例で有意に(P<0.001)狭まっていることがわかった.【考察】RCA起始異常は770例中11例,1.4%に認めた.LCAが右寄りから起始している症例においては,RCAも左寄りから起始している傾向がある.LCAが3時あるいはそれよりも右から起始している症例においては,RCA起始異常を念頭に置いて,注意深くRCA起始を観察する必要があると考えられる.【結論】LCA起始が右寄りであると,RCA起始異常の確率が高い.