[P13-3] フォンタン術後症例における心血管造影後の中心静脈圧上昇の臨床的意義
キーワード:フォンタン循環, 中心静脈圧上昇, 末梢臓器障害
【背景】フォンタン循環は静脈系リモデリングにより、容量負荷による中心静脈圧(CVP)上昇が顕著となる症例がある。この代償機構は前負荷確保に有効だが、心血管負荷時には静脈うっ血を強め、末梢臓器障害を助長する可能性がある。CVPが上昇しやすい症例の特徴を後方視的に解析した。【対象と方法】心臓カテーテル検査の際に、主心室造影及び造影前後のCVPの変化を測定したフォンタン35例を対象に、CVPが2mmHg以上増加した例 (R群)とそうでない例(NR群)を比較検討した。R群とNR群で主心室造影(0.8±0.3, 1.4±1.0 ml/kg, p=0.13)、全造影(6.0±3.3, 6.7±2.2 ml/kg, p=0.52)共に造影剤量に差はなく、R群で少ない傾向を認めた。【結果】主心室造影でR群は38%、全造影では60%に上昇した。CVP上昇は造影前CVPと関連しなかった。R群はNR群と比較しEDP(p=0.043)及び収縮期血圧上昇(p=0.007)が大きかった。両群で心室容積、駆出率(EF)、心拍出量(CO)、肺血管抵抗(PVR)、体血管抵抗(SVR)、心室後負荷指標に差はなかったが、NR群でHANP(20.0±5.2, 54.1±38.2 pg/ml, p=0.022)の著明な高値を認め、生理的ナトリウム利尿ペプチド(NP)が保護的に作用している可能性が疑われた。全造影でも両群でEF、CO、PVR、SVR、心室後負荷指標に差はなかったが、R群の心室容積(88±16, 142±16%) が小さく、腎機能指標 (eGFR: 91±15, 120±30 ml/min/m2, p=0.0011, BUN 13±3, 10±4 mg/dl, p=0.0083)の低下を認めた。興味深いことにNR群ではHANP (43±33, 53±41 pg/ml, p=0.50)、BNP(17±15, 25±14 pg/ml, p=0.14)が高い傾向があり、NT-pro BNP(62±43, 222±160 pg/ml, p=0.0017)も高値を示した。【結論】R群は小さい心室容積を伴い心血管系の急性反応が強い特徴があり、NPが低く腎機能が低下していた。近年、HFpEFにおいてNP相対的欠乏と予後不良の関連が指摘されたが、フォンタン循環においても同様に末梢臓器障害と関連する可能性がある。