[P13-6] 左心系弁膜疾患と心室拡張障害の関連~僧帽弁への介入は術後心室拡張機能障害と関連する~
Keywords:弁膜症, 拡張機能障害, 僧帽弁
背景:左心系弁膜症は左心系リモデリングと肺うっ血を来す疾患群である。成人における僧帽弁疾患では乳頭筋および腱索による繋留により付加的な拡張機能障害を合併しやすいことが知られている。小児においても僧帽弁疾患では拡張機能障害を合併するという仮説を検証した。対象と方法:2008年から2019年に心臓カテーテル検査を施行した、大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症(N=20)と僧帽弁狭窄症兼閉鎖不全症(N=17)を対象に血行動態指標を比較検討した。また未修復例と修復後例の血行動態も比較した。結果:僧帽弁疾患と大動脈疾患では心拍出量 (3.1±0.9, 3.2±0.8 L/min/m2)、左室拡張末期容積 (LVEDV: 133±56, 126±51 %N)、駆出率(62±7, 63±7 %)、体・肺血管抵抗で有意差はなかったが、僧帽弁疾患で心拍数 (100±24, 83±21 bpm, p=0.020)、Pp/Ps (0.35±0.19, 0.23±0.08, p=0.010)、Rp/Rs (0.15±0.10, 0.10±0.09, p=0.09)が高く、左室拡張末期圧 (LVEDP: 9.6±2.2, 13.9±4.2 mmHg)が低かった。肺動脈楔入圧-LVEDP (1.5±6.3, -4.1±3.2 mmHg, p=0.0005)は大きく、左室大動脈圧較差 (-6.2±7.5, 13.1±28.5 mmHg, p=0.010)は小さかった。修復症例と未修復症例を比較すると、LVEDV (119±68, 134±54 %N, p=0.63)は差が無く、修復後症例で肺動脈楔入圧(15.4±8.3, 9.4±1.4 mmHg, p=0.023)が低い一方、LVEDPは修復後症例で高い(7.4±2.2, 10.6±1.5 mmHg, p=0.0033)傾向があった。ANCOVAを用いて左室容積の影響を除外しても、修復そのものによりEDPが上昇することが示唆された (p=0.0052)。結論:同様の心室容積・心拍出量であっても、大動脈弁疾患と比較し、僧帽弁疾患のほうが肺うっ血・肺高血圧症に至りやすい。僧帽弁疾患では、大動脈弁疾患と比較して必ずしもLVEDPが高いわけではないが、修復後に心室容積の拡張を伴わなくても、僧帽弁への介入そのものにより拡張機能障害が顕在化することを念頭に置くべきである。