[P14-4] 血漿トロンボモジュリン値から見たGlenn術後の静脈圧上昇による凝固線溶系機能の変化
Keywords:トロンボモジュリン, グレン手術, 静脈
【背景】右心バイパス術後の抗凝固療法について、いまだ明確な基準は確立していない。トロンボモジュリン(TM)はトロンビンを凝固因子から抗凝固因子に変換する糖蛋白質である。TMは血管内皮傷害のマーカーとされ、Fontan術(F術)後患者や慢性心不全患者において低下することが報告されている。しかし、その機序が静脈うっ滞によるものか静脈圧上昇に伴うものかは未だ不明である。【目的】血漿TM値と静脈圧との関連を明らかにする。【方法】対象は2020年9月から2021年2月までに当院にて心臓カテーテル検査を行われたGlenn術(G術)後の症例27例。全例にアスピリン及びワーファリン(目標PT-INR 1.5-2.0)が導入されている。心臓カテーテル検査時のSVC, IVC各々のPT-INR, APTT, TM, F1+2, PIC, TAT, フィブリノーゲン, d-dimerを計測し、血圧、心係数、肺動脈係数、肺血管抵抗と合わせて比較検討した。【結果】男:女=13:14、中央値はG術時年齢0.93歳、カテーテル検査時年齢2.30歳、体重10.7kg、BNP 12.3pg/mLであり、血栓塞栓症の合併例はなかった。カテーテルデータではSVC圧 7mmHg、IVC圧 3.0mmHgで有意差があった(p<0.01)。心係数 3.12L/min/m2、肺動脈係数 255mm2/m2、肺血管抵抗 0.62Wood単位・m2であった。SVC, IVCの順にPT-INR 1.86:1.84, APTT 41.0:44.8(秒), TM 5.0:4.9(正常値3.8-13.3TU/mL), F1+2 72:63(正常値 69-229pmol/L), PIC 0.5:0.5(正常値<0.8μg/mL), TAT 1.8:1.8(正常値<4.0ng/mL), フィブリノーゲン 214:216(mg/dL), d-dimer 0.5:0.5(μg/mL)であり、いずれも有意差はなかった。なお、当院でのF術後35例に対する同検査では既報告のようなTM低下はなかった。【考察】右心バイパス循環におけるTM値について、G術後の静脈圧上昇と有意な関連はなかった。F術後の経時的変化やアスピリン・ワーファリン非内服例との比較により今後も検討を重ねる必要がある。