The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

カテーテル治療

デジタルオーラルII(P17)
カテーテル治療 3

指定討論者:片岡 功一(広島市立広島市民病院)
指定討論者:佐藤 誠一(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)

[P17-1] 左肺動脈低形成のfailed Fontan症例に対してステント留置を行った1例

本田 啓 (熊本赤十字病院 小児科)

Keywords:failed Fontan, 肺動脈ステント留置術, 肺動脈低形成

【背景】Fontan循環において局所の肺動脈狭窄に対する治療効果については既報が多数存在するが、低形成肺動脈に対する治療介入の是非については明らかではない。今回、failed Fontan症例において低形成の肺動脈に対してステント治療を行った症例を経験したため文献的考察を交えて報告する。【症例】14歳女児。完全型房室中隔欠損症、左室低形成。1歳時にグレン手術施行。その後低心機能(主心室EF<40%)となり、β遮断薬、ACEI内服による心不全加療を要した。7歳時に心機能の改善が診られたため開窓型Fontan術を施行。10歳時に鋳型肺炎を発症。その後、房室弁逆流、左室流出路狭窄の進行を認め、胸水貯留、心不全管理のための入院を繰り返した。手術適応を検討するも多発性の肺動静脈瘻を認めるなど肺野条件も悪く、非適応と判断された。このため元来低形成であった左肺動脈に対してステント(P308)留置術(Admiral 12mm 4cm)を施行。6mm径から10mm径まで拡大し、心不全状態は残存するも胸水貯留や心不全増悪による入院は回避できている。【考察】Fontan循環における肺動脈狭窄に対する介入は圧較差2mmHg以上あるいは形態的評価をもって適応とされているが開窓型Fontanでは圧較差による評価は困難である。また、低形成肺動脈においては肺血管床についての予測が困難であり、肺動脈主幹部の拡大で増加する肺血流がもともとの肺血管床に対して許容、および効果的なのかが既報もなく判断できない。MRIによる肺動脈血流量や造影CTによる肺動脈容積を経時的に算出することにより肺血管床の成長の一指標となる可能性が期待される。【結語】failed Fontan症例において低形成肺動脈に対するステント留置術によりFontan循環改善の一助になる可能性が示唆されるが、その適応および適切な拡大サイズなどについての指標が存在せず、今後の症例の積み重ねが必要である。