第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

カテーテル治療

デジタルオーラルII(P18)
カテーテル治療 4

指定討論者:脇 研自(大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院)
指定討論者:加藤 温子(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

[P18-2] 純型肺動脈閉鎖に合併した冠動脈瘻に対しAmplatzer Vascular PlugIIで塞栓を行った1例

土井 大人, 宗内 淳, 江崎 大起, 小林 優, 古田 貴士, 杉谷 雄一郎, 渡邉 まみ江 (JCHO九州病院 小児科)

キーワード:純型肺動脈閉鎖, 冠動脈瘻, Vascular Plug

【緒言】純型肺動脈閉鎖症の冠動脈瘻に対するカテーテル治療は、通常の先天性冠動脈瘻とは異なり、高圧右室であるため閉鎖に工夫が必要である。【症例】症例は2歳8か月女児。純型肺動脈閉鎖、右室低形成、左前下行枝右室冠動脈瘻の診断で、日齢32に心房中隔裂開術、日齢34にBTシャント術、生後8か月時にGlenn手術を行った。冠動脈瘻によりSeg5は10mm台と拡張し、Glenn手術の際に瘻孔結紮術を施行したが、術後も瘻孔が残存した。経年的に15mm台へと拡大し、破裂や血栓形成のリスクを考慮し、カテーテル塞栓を試みる方針とした。左室圧=89/e6に対し、右室圧=184/e6と左室圧を凌駕。冠動脈造影では、瘻孔を介して拡張期に冠動脈から右室に、収縮期に右室から冠動脈へ流入するto and froを認めた。体循環への脱落を懸念し、コイルではなくVascular Plugを用いることとした。まず、左冠動脈側よりJLカテーテル2.0を親カテとして、2.7Frマイクロカテーテルを右室内に出し、右室側からスネアカテーテルで把持し、マルチパーパスカテーテルを左冠動脈側へ引き込んだ。JLカテーテル内を0.035”ラジフォーカスガイドワイヤーへ交換し、スネアカテーテルで把持し、今度は逆に右室側へ引き込み、体外にガイドワイヤーを出した。ガイドワイヤー越しに、5Frロングシースを右室から左冠動脈へ挿入し、Amplatzer Vascular PlugII 8mmを用いて、ディスクを右室内と拡張した左冠動脈内で展開して塞栓した。塞栓中に心電図変化を認めず、塞栓後の冠動脈造影でto and froの消失を確認した。【考察】純型肺動脈閉鎖は右室依存性冠循環でなくとも、瘻孔より末梢の冠動脈狭小化により心筋虚血・梗塞に至ることもあり、必ずしも予後良好な疾患ではない。今回、純型肺動脈閉鎖に合併した巨大冠動脈瘻に対してVascular Plugを用いて合併症なく瘻孔塞栓が可能であった。今後も血栓形成や虚血症状に注意して経過をみていく必要がある。