[P19-1] 三尖弁閉鎖症/肺動脈弁欠損症に対する肺動脈バルーン閉鎖テストの有用性
Keywords:肺動脈弁欠損, 肺動脈バルーン閉鎖テスト, フォンタン手術
【はじめに】三尖弁閉鎖症/肺動脈弁欠損症(TA/APV)は非常に稀であるが予後不良な疾患で、44%に周術期死亡がみられると報告されている。最終姑息術として右心バイパスが選択され、有効な肺血流獲得のために主肺動脈と右室の切離が必要となるが、右室が盲端となり、冠還流や右室内血栓の問題、左室流出路狭窄が懸念される。【症例】5歳女児。生後TA/APVと診断し、日齢67に右体肺動脈短絡術、2か月に左体肺動脈短絡術を実施。酸素飽和度85%。主肺動脈は結紮せずそのままとしていた。Glenn術前評価にあたり、主肺動脈から右室への逆流が有効肺血流阻害因子となると想定したが、右室を盲端とすることで右室内圧上昇を生じる懸念もあったので、肺動脈バルーン閉鎖試験を実施した。主肺動脈径4.8mmに対して血管拡張用バルーン(6mm径)をシャントグラフトを通して肺動脈内に留置し、バルーン閉塞した状態で血管拡張用バルーン先端圧を測定した。バルーン閉塞前後では右室圧15/5mmHg→21/16mmHg、左室圧85/5→95/6mmHgであり、心電図変化もみられなかった。心室圧上昇は許容範囲とした。肺動脈造影ではバルーン閉塞しにより肺動脈末梢への造影剤の流れが改善したことから、Glenn時に主肺動脈結紮する方針とした。4歳時にGlenn術を実施した。術後10日目に心電図でST変化が見られたが自覚症状や血行動態の変化はなかったので経過観察した。PA indexはGlenn術前113→Glenn術直後104→Glenn術後1年143mm2/m2と肺動脈の成長を促していた。Glenn術後1年の造影CTでは右室内は血栓化して閉塞していた。6歳時に心外導管型Fontan術を実施し、術後中心静脈圧11mmHgであった。【考察】TA/APVにおいては肺動脈結紮により右室内圧の異常な上昇を生じたという報告もあり、その対処にはバルーン閉塞テストにより個別評価することが望まれる。