[P2-2] Eustachian弁による運動時低酸素血症を呈した一幼児例
Keywords:Eustachian弁, 低酸素血症, Chiari network
【背景】発達したEustachian 弁に心房間短絡を伴う場合、右左短絡によるチアノーゼ、奇異性塞栓、右心系の低形成などを合併することが知られているが、運動時の低酸素血症として発症した報告は少ない。【症例】4歳の男児。胎児期に静脈管欠損、心室中隔欠損、軽度の右室低形成を指摘されていた。在胎36週3日、2743gで出生、出生後の心臓超音波検査でVSD、ASD、肺動脈弁狭窄、軽度右室低形成と診断された。身体所見からNoonan症候群を疑われたが左室の心筋肥厚は軽度だった。安静時のSpO2は90%程度で推移した。成長に伴い運動時の低酸素血症が出現、SpO2が80%台まで低下するようになったため精査を行った。全身麻酔下で施行した経食道超音波検査では、ASDは右左短絡であり、右房内に大きなEustachian 弁を認めChiari networkを形成していた。右室造影では同構造物が吹き流し状に右室流出路まで突出している所見がみられた。平均右房圧および左房圧はともに5mmHg、肺動脈弁狭窄の圧較差は29mmHg、肺体血流比は0.62であった。コントラストエコーでは、下大静脈から注入したコントラストが発達したEustachian 弁、Chiari networkによりASDへ誘導され左房に流入する様子が観察され、右左短絡が生じていた。バルーンによるASDの一時閉鎖でSpO2は95%に上昇したが、左右心房圧、心拍出量には有意の変動を認めなかった。【結語】ASDでの右左短絡による低酸素血症の原因として、Eustachian弁、Chiari networkの関与は念頭に置く必要がある。本症例では本構造物は胎生期の右室低形成に関連していた可能性がある一方、成長に伴い運動時の低酸素血症として症候化した点は興味深い。本病態では経食道超音波検査やコントラストエコーによる詳細な解剖学的評価が重要である。