[P20-3] 心室性不整脈のみを呈したAndersen-Tawil症候群(LQT7)の1例
Keywords:Andersen-Tawil症候群, 心室性不整脈, Channelopathy
【背景】Andersen-Tawil症候群(ATS;LQT7)はU波を伴う心室性不整脈、周期性四肢麻痺、外表小奇形を3徴とするKCNJ2遺伝子変異を認める不整脈疾患とされるが、稀なため臨床像に不明な点も多い。今回、多形PVCを契機に診断に至ったATS症例を経験したので報告する。【症例】16歳、女児。中学1年時学校心臓検診でPVCを指摘され、前医にて経過観察となった。Holter心電図で37%のPVCが続いたため、精査加療目的に当院紹介となった。安静時心電図ではQTc(F)は417msと延長なく、右脚ブロック型の上方軸と下方軸の二方向性PVCを認め、運動負荷心電図で失神は伴わないもののVTを認めた。Verapamil、mexiletineによる内服は無効でありtrigger PVCの抑制を目的にRFCAの方針とした。PVCに対して通電を繰り返すも根治せず、flecainide静注でPVC抑制を認めたため同剤による内服管理の方針とした。二方向性PVCを認めたためカテコラミン誘発多形VTの鑑別も視野に遺伝子解析を実施したが、既報のKCNJ2遺伝子変異を認めATSと診断した。現在、Flecainide開始後2年となるが、VTは認めずPVCも著明に抑制されており、PVC以外の所見は認めていない。【考察】ATSにおけるPVC/VTは、KCNJ2遺伝子でコードされる内向き整流性K+ channelのIK1やKir2.1電流の減少が原因とされ、flecainideはこれらの電流を増加させるという報告も見られるが、そのメカニズムには不明な点もある。ATSは表現型の幅も広く、本症例のように心臓表現型のみを呈する症例もあると考えられる。RFCAはVTのtriggerとなるPVCの抑制に一定の効果を得た可能性もあるが、根治は一般に困難と思われる。【結論】多形PVCの症例では、本疾患も念頭に遺伝子検査を含めた診療を行う必要がある。