[P20-5] 失神を契機に発見された肥大型心筋症とQT延長症候群を合併した3歳女児に対するICD植込み術 -体格の小さな小児に対するICD植込みの工夫-
キーワード:肥大型心筋症, QT, ICD
【緒言】肥大型心筋症(HCM)とQT延長症候群(LQTS)の合併は散見されるが、小児での報告は極めて少ない。また体格の小さい小児に対するICD植込み術(ICDI)は少なくデバイスの留置方法に工夫を要する。我々は失神を契機に発見されたHCMとLQTSを合併した女児に新たな方法でICD植込み術を行い成功した。【症例】3歳4ヶ月女児、既往歴なし【経過】入院当日走っていた際に転倒、意識消失した。救急隊接触時バイタルはJCS300の意識障害以外正常。心電図はHR60、NSR、顕著なQT延長(QTc520msec)とV1-6の陰性T波を認めた。心エコーでは中隔側を中心とした左室心筋肥大(IVSTd 15mm)を認めた。後日行った心筋生検で錯綜配列と部分的な高度線維化を認め、HCMの診断に至った。心臓MRIのLGEでは心尖部、側壁の中層に濃染とT1 mappingにてT1延長を認め広範囲の線維化が示唆された。神経学的検査は陰性で、失神の原因は心原性である可能性が高くICDIの適応と判断した。手術は心移植待機時のVAD導入とリード断線のリスクを考慮して、右室前面にショックリードを留置しデバイスを左側胸部の前鋸筋と外肋間筋の間にポケットを作成し留置した。心外膜ではあるがSICDに近い形で心臓を挟むことが可能であった。VF誘発試験を行い30Jで停止を確認し、40Jに設定して終了した。術後20日目ICDの作動なく退院した。【考察】体格の小さな小児のICDIではポケットを上腹部に作成することが多いが、成長に伴う断線が問題となる。またショックリードは心臓の後面や心膜横洞を通す方法がとられるが、我々は成人のSICDからヒントを得て側胸部にデバイスを留置し、右室前面にショックリードを留置することに成功した。本方法を用いることで成長に伴うリード断線のリスクは低くなると予想する、また美容的にも優れる。