[P21-7] 難治性心室頻拍に対してstepwise ablationが有効であった一例
キーワード:心室頻拍, Storm, アブレーション
【背景】心室頻拍(VT)は致死的な不整脈の一つである。有効な治療としてカテーテルアブレーション(CA)が挙げられ、自動能や撃発活動の起源・リエントリー回路を焼灼し完治を目指すことができる。しかし、治療が刺激伝導系に及ぶ場合、伝導障害を招く可能性がある。今回、難治性の多形性VTに対してstepwise approachによるCAを行うことで房室ブロック(AV block)を回避しつつ治療しえた一例を経験した。【症例】特発性VTの3歳男児。1歳時にVTを発症し、植込型除細動器(ICD)植込術を施行した。2歳時にCAを施行したが誘発不能のためpace mappingおよびP1電位の焼灼を行いNadolol単剤投与で管理されていた。今回、VT stormを来しICDによる80回以上の適切作動を生じた。VT波形は右脚ブロック型、下方軸を主とするものの、多形性であった。抗不整脈薬治療に反応せずincessant VTとして持続し、血行動態が破綻したため体外式膜型人工肺を導入した。その後もVT再燃を繰り返し静注抗不整脈薬から離脱できず、2か月間で4度のCAを段階的に施行した。1st sessionでは誘発不能であり、pace mapを指標に左脚前枝を焼灼した。しかし左脚前枝ブロックが回復しVTの再発が生じ、2nd sessionとしてIrrigation Catheterを用い、同部位を焼灼した。VT波形は上方軸主体となり、左脚後枝からのbreak outと考え、3rd sessionを施行した。VTの起源はHis近傍にあり、左脚後枝からHis近傍まで焼灼したがAV blockを懸念しincomplete ablationで終了した。その後も再発を認めたため、4th sessionではHis近傍の最早期部位に対してCryoablationを選択し、左脚ブロックを生じつつもVTは誘発不能となった。Cryoablation中に一過性の可逆的なAV blockを認めており、高周波通電であれば不可逆的なAV blockが生じた可能性が高かった。【まとめ】難治性の多形性VTに対し、CAが有効な治療となりうる。過剰な伝導障害を防ぐためにstepwise CAが有効な可能性がある。