第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

電気生理学・不整脈

デジタルオーラルII(P21)
電気生理学・不整脈 2

指定討論者:梶山 葉(京都府立医科大学)
指定討論者:吉田 修一朗(JCHO中京病院)

[P21-7] 難治性心室頻拍に対してstepwise ablationが有効であった一例

佐藤 要1, 大森 紹玄1, 小川 陽介1, 田中 優1, 白神 一博1, 浦田 晋1, 松井 彦郎1, 柴田 深雪2, 平田 康隆2, 小島 敏弥3, 犬塚 亮1 (1.東京大学医学部附属病院 小児科, 2.東京大学医学部附属病院 心臓外科, 3.東京大学医学部附属病院 循環器内科)

キーワード:心室頻拍, Storm, アブレーション

【背景】心室頻拍(VT)は致死的な不整脈の一つである。有効な治療としてカテーテルアブレーション(CA)が挙げられ、自動能や撃発活動の起源・リエントリー回路を焼灼し完治を目指すことができる。しかし、治療が刺激伝導系に及ぶ場合、伝導障害を招く可能性がある。今回、難治性の多形性VTに対してstepwise approachによるCAを行うことで房室ブロック(AV block)を回避しつつ治療しえた一例を経験した。【症例】特発性VTの3歳男児。1歳時にVTを発症し、植込型除細動器(ICD)植込術を施行した。2歳時にCAを施行したが誘発不能のためpace mappingおよびP1電位の焼灼を行いNadolol単剤投与で管理されていた。今回、VT stormを来しICDによる80回以上の適切作動を生じた。VT波形は右脚ブロック型、下方軸を主とするものの、多形性であった。抗不整脈薬治療に反応せずincessant VTとして持続し、血行動態が破綻したため体外式膜型人工肺を導入した。その後もVT再燃を繰り返し静注抗不整脈薬から離脱できず、2か月間で4度のCAを段階的に施行した。1st sessionでは誘発不能であり、pace mapを指標に左脚前枝を焼灼した。しかし左脚前枝ブロックが回復しVTの再発が生じ、2nd sessionとしてIrrigation Catheterを用い、同部位を焼灼した。VT波形は上方軸主体となり、左脚後枝からのbreak outと考え、3rd sessionを施行した。VTの起源はHis近傍にあり、左脚後枝からHis近傍まで焼灼したがAV blockを懸念しincomplete ablationで終了した。その後も再発を認めたため、4th sessionではHis近傍の最早期部位に対してCryoablationを選択し、左脚ブロックを生じつつもVTは誘発不能となった。Cryoablation中に一過性の可逆的なAV blockを認めており、高周波通電であれば不可逆的なAV blockが生じた可能性が高かった。【まとめ】難治性の多形性VTに対し、CAが有効な治療となりうる。過剰な伝導障害を防ぐためにstepwise CAが有効な可能性がある。