[P23-3] ペースメーカー部位・モード変更により改善した先天性完全房室ブロック・拡張型心筋症の1例
キーワード:先天性完全房室ブロック, 拡張型心筋症, ペースメーカー
【背景】先天性完全房室ブロック(CCAVB)に遅発性の拡張型心筋症(DCM)を示した症例のうち、ペーシング部位の変更により症状が改善する症例が報告されている。今回ペースメーカー挿入後にDCMが進行したCCAVB症例にペーシング部位・モードの変更を行い劇的な改善を得た症例を経験し報告する。【症例】2歳女児。在胎23週に母体抗SSA抗体陽性先天性完全房室ブロックと診断され母体ステロイド・β刺激薬投与を行った。出生後高度徐脈が改善せず、日齢0にペースメーカー(VVI mode)右室心外膜植え込み術を行った。1歳頃から心不全症状の悪化、拡張末期左室内径(LVIDd)の拡大、左室駆出率(LVEF)の低下、僧帽弁逆流(MR)の増悪を認め、2歳0か月時に慢性心不全急性増悪のため入院した。入院後LVIDd 53mm、LVEF 31%、高度MR、BNP 3561pg/mlであったが心不全治療の強化によりLVIDd 43mm、LVEF 50%、BNP 225pg/mlまで改善した。ペースメーカー誘発性が疑われ、2歳5か月時にペースメーカー心室リードを右室前面から左室心尖に移動し、DDD modeに変更した。術後2か月にはLVIDd 41mm、LVEF 68%、BNP 75pg/mlとなり、2年間の経過観察中に利尿剤、酸素投与を終了した。現在4歳8か月でLVIDd 39mm、LVEF 69%、mild MR、BNP 32pg/mlで心不全による入院はなく経過良好である。【考察】CCAVBに併発するDCMの報告は発生率14-32%で見られ、抗SSA抗体の直接的な心筋障害やペースメーカー留置が原因となることがある。特にペーシング部位が右室流入路にある場合、DCM発生率が高いとする報告があり、本症例ではペーシング部位・モード変更が著効を示したと考えられた。【結語】CCAVBで右室流入路にペースメーカーを留置した症例で、ペースメーカーの部位・モード変更によりDCMが改善する可能性が示唆された。