[P23-4] 感染を契機にペースメーカーから離脱した先天性完全房室ブロックの9歳女児の一例
キーワード:完全房室ブロック, ペースメーカー, 感染
【背景】先天性完全房室ブロック(ccAVB)は出生後早期より恒久的ペースメーカー(PM)植込みの適応となる疾患である。今回、感染を契機にリードを含めたPM全抜去を行ったが、再植込みを行わず離脱しえた症例を経験したため報告する。【症例】症例は9歳女児。在胎28週時に胎児徐脈を契機に母体の抗SS-A抗体陽性が判明し、出生時にccAVBと診断された。日齢14に心外膜リードでの恒久的PMの植込みが行われた。8歳時にリード不全でデバイス交換が必要となった際に、体格にあわせて左鎖骨下静脈からの経静脈リードのPM植込みへと変更された。9歳時に転倒してPM植込み部位の周囲の皮膚を受傷し、約1ヶ月後に同部位を友人にリコーダーで叩かれ、水疱形成がみられた。近医皮膚科を受診し、内服抗菌薬と外用ステロイド薬を使用していたが改善がなかった。最初の受傷より約2ヶ月後に創部からPMが露出し、デバイス感染の診断で緊急入院となった。発熱や心内疣贅はなく、感染性心内膜炎は否定的と考えられたが、血液培養3セットを採取して抗菌薬加療を開始した。完全房室ブロックによる心室性補充調律であったが、自脈率が高くPMへの依存がなかったため、今回のPM全抜去と同時にPM離脱を試みる方針とした。入院6日目に経静脈PM全抜去を施行した。なお、深部膿、リード、ジェネレーターからStaphylococcus capraeが検出されたが、血液培養は陰性であった。PM抜去後も長時間のpauseはなく、抜去から9日後に自宅退院となった。【考察】ccAVBのため出生時より使用していたPMから離脱した症例を経験した。今後徐脈による症状の出現のほか、運動耐用能、心機能などの経時的評価が必要である。適切な評価とフォローにより、PM再植込みが必要な時期を検討しながらではあるが、出生時に植込みを行ったPMであっても離脱は可能であると考えられた。