[P24-4] 小児心臓手術術後の高アミラーゼ血症の臨床的意義
キーワード:高アミラーゼ血症, 心臓手術, 周術期管理
【目的】小児の心臓手術後の周術期管理において逸脱酵素の上昇は循環不全の兆候として全身状態の悪化を示すことが多い。血清アミラーゼ(AMY)値は時として高値となるが、他の逸脱酵素と異なる経過を辿ることが多く、またまとまった報告もなく、高AMY血症の臨床的意義は不明な点が多い。小児心臓術後の周術期における高AMY血症の臨床的特徴および術後経過への影響を検討した。【方法】2018年1月から2020年7月の間に和歌山県立医科大学小児心臓外科で、心房中隔欠損症もしくは心室中隔欠損症に対して人工心肺下で根治術を施行された症例が対象。手術当日、術後1日目、術後2日目に血清AMY値を測定。血清AMY値は成人の正常上限の125IU/L以上をAMY値高値とし、AMY値125IU/L未満をAMY正常群、125IU/L以上をAMY高値群として2群に分けた。AMY値が500U/L以上の異常高値の症例はAMYアイソザイムパターンを評価した。患者背景、術前検査結果(心臓カテーテル、心臓超音波、心電図)、術後血液検査、術後バイタル、術後経過について2群間で比較し後方視的に検討を行った。【成績】対象症例は44例(AMY正常群32例、AMY高値群12例)、AMY異常高値を認めた症例は6例。AMY異常高値群は全例唾液型AMYが有意であった。染色体異常8例、生後5か月未満の児11例全例がAMY正常群だった。2群間で手術時間、心肺時間、AMY以外の生化学検査、術前後の心機能は差を認めなかったが、AMY高値群で術後12-24時間の発熱、および術後の頻脈性不整脈が多い結果となった。一方で挿管日数、ICU滞在期間、入院期間とも差を認めなかった。【結論】手術後の唾液型AMY高値は、器具や体位による唾液線の圧迫が原因と考えられているが、今回の結果から手術による侵襲や心肺停止が全身に与える反応を捉えている可能性が示唆された。