The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

集中治療・周術期管理

デジタルオーラルII(P25)
集中治療・周術期管理 2

指定討論者:小田 晋一郎(九州大学大学院医学研究院循環器外科学)
指定討論者:杉村 洋子(千葉県こども病院)

[P25-1] Willis動脈輪奇形に伴う広範囲脳梗塞の報告とその対策

園部 藍子, 加藤 秀之, 山本 隆平, 石井 知子, 五味 聖吾, 松原 宗明, 平松 祐司 (筑波大学附属病院 心臓血管外科)

Keywords:ECLS, 中枢神経合併症, Willis動脈輪奇形

【背景】脳梗塞は心臓手術やextracorporeal life support (ECLS) の重大な合併症の1つであり、児の運動・精神発達に多大な影響を与え得る。今回我々は、ECLS中にWillis動脈輪奇形と右頸部カニュレーションに起因する広汎な脳梗塞を生じた一例を経験した。この経験から、同様のWillis動脈輪奇形を合併する児の大動脈縮窄症手術時に手術手技の工夫により脳梗塞を回避し得たので、文献的考察を加え報告する。【症例1】生後6ヶ月男児。三尖弁閉鎖症に対し生後2ヶ月でBTシャント造設術を行い、Glenn手術待機中であった。入院中に啼泣を契機に心肺停止に至り、直ちにE-CPRが開始された。右総頚動脈・内頚静脈カニュレーションにてV-A ECMOを確立し、ECLS開始後4日目にECMOから離脱した。ECLS中は連日頭部エコーを行っていたが、明らかな異常は指摘出来なかった。ECMO離脱後3日目に四肢と顔面にミオクローヌス様の動きを認めたため、頭部CTを撮影したところ右大脳半球、左前大脳動脈領域の脳梗塞を認めた。MRAでは後大脳動脈は両側ともにfetal typeであり、左前大脳動脈中枢側 は欠損していた。【症例2】生後10ヶ月男児。大動脈縮窄症と異所性右鎖骨下動脈による食道圧迫に対し修復術が計画された。術前の頭部MRAで左前大脳動脈と両側後交通動脈の欠損を認めた。周術期脳梗塞を回避するためには両側総頚動脈と鎖骨下動脈からの供血が必須と考えられ、左房脱血、下行大動脈・右鎖骨下動脈送血で心拍動下に大動脈縮窄症根治術を施行し、合併症なく退院した。【考察】症例1は右頚部アプローチにより右内頸動脈の血流が低下したことで、支配領域である右大脳半球、左前大脳動脈領域に脳梗塞が生じたと考えられる。Willis動脈輪の奇形は16-63%と比較的頻度が高いことを認識し、ECLSや頚部分枝遮断を伴う手術時には局所酸素飽和度をモニタリングし、術前に脳動脈の評価を行う等、脳梗塞回避のための対策を行うことが重要と考える。