第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラルII(P26)
心筋心膜疾患 1

指定討論者:津田 悦子(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)
指定討論者:廣野 恵一(富山大学附属病院)

[P26-1] Desmin遺伝子変異と完全房室ブロックを合併した肥大型心筋症の関連性

岡 秀治1, 今西 梨菜1, 古川 卓朗2, 田邊 康子3, 廣野 恵一4, 中右 弘一1, 東 寛1 (1.旭川医科大学 小児科, 2.市立旭川病院 小児科, 3.旭川医科大学 循環器内科, 4.富山大学 小児科)

キーワード:Desmin, 肥大型心筋症, 完全房室ブロック

【背景】肥大型心筋症(以下、HCM)において突然死予防は重要であるが、小児では知見が十分ではない。また、HCMに完全房室ブロックを合併することは稀であり、その原因も不明である。【症例】8歳、女児。小学校の心電図検診で左室肥大所見を認め、HCMの診断でフォローされていた。経過中の心電図で、PQ幅、QRS幅の延長、二枝ブロックの所見を認めた。某日、歩行中に意識消失し、心肺蘇生され当院へ搬送された。完全房室ブロックを認めたため緊急ペーシングを行い、後日ICD植え込み術を施行した。入院後の遺伝子検査で、Desmin遺伝子のde novoのミスセンス変異を認めた(p.Arg406Trp (c.1216C>T))。【考察】HCMの遺伝子変異は、サルコメア蛋白をコードする遺伝子の変異が最多であるが、他の細胞骨格を形成する遺伝子の変異も報告されている。Desminは染色体2q35に存在し、遺伝子変異により心筋症、心伝導障害、骨格筋の筋力低下を生じる。Desmin関連心筋症は拡張型心筋症で発症することが多いが、若年者の場合は拘束型心筋症や肥大型心筋症で発症することもある。遺伝子変異をもつ患者の70%程度に心筋症が発症し、そのうち60%に心伝導障害を生じる。DesminはPurkinje細胞に多く発現しているため、完全房室ブロックを起こすことが多く、遺伝子変異がわかった場合はペースメーカーやICD留置を検討する必要がある。完全房室ブロックの他にも、PQ幅やQRS幅の延長、脚ブロックや二枝ブロックが特徴的である。また、骨格筋の筋力低下も70%程度に発症するため、神経学的なフォローも重要である。【結論】Desmin遺伝子変異はHCMに合併する完全房室ブロックの原因の可能性がある。HCM患者にDesmin遺伝子変異を認めた場合は、将来的な心筋症や心伝導障害、骨格筋の筋力低下に注意すべきである。