[P26-3] Noonan症候群,閉塞性肥大型心筋症に対して高容量プロプラノロール投与を行った3例
Keywords:肥大型心筋症, β遮断薬, Noonan症候群
【はじめに】Noonan症候群(NS)に伴う肥大型心筋症は乳児期発症が多く,特発性肥大型心筋症に比べて予後不良で、非選択的β遮断薬であるプロプラノロールの内服によっても,治療に難渋することが多い.NS(PTPN11変異)の閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対して当院で大量プロプラノロール投与(HP)を行った3例について有効性および安全性を検討した.【症例1】11歳女児.生後4か月より,左室流出路狭窄(LVOTS:PG32mmHg)および右室流出路狭窄(RVOTS:PG66mmHg), BNP3548pg/mlに対し,HPを開始,1歳5か月時点で70mg(9mg/kg/d)まで増量した.4歳時に左室中部狭窄が残存していたため、110mg(9mg/kg/d)まで増量.7歳時に改善を認め(LVOTS:PG<10mmHg, RVOTS:PG55mmHg),以降減量を行った.7歳で40mg/d,心不全症状(BNP59.4pg/ml),LVOTSは認めていない.【症例2】3歳男児.日齢2で当院に搬送.HOCMの診断でHPを開始し、2か月時にシベンゾリンの内服を追加、6か月時にBNP5553pg/mlまで上昇したが,LVOTSは最大でPG64mmHgとなった。HPを32mg/kg/dまで増量することで、BNPは低下した.また,心室性期外収縮が3645発/日まで増加したが,BNP低下に伴い数発/日まで減少.2歳7か月以降 , HP280mg/dでLVOTSは改善,PG:29mmHgまで低下,BNP500pg/ml前後で推移している.【症例3】1歳6か月女児.1か月時よりHPを開始した.LVOTSは24→80mmHgに進行し,シベンゾリンを追加し,プロプラノロールを38mg/kg/dまで増量した.5か月以降BNP150-200pg/ml,LVOTS:PG80mmHgで増悪はないため,8か月時に退院したが,1歳4か月より再びLVOTSが進行.現在LVOTS:PG170mmHgであるが、心不全症状は認めていない.全例、低血糖や徐脈の副作用はなかった。【結語】乳児NSのHOCMに対するHP療法は短期的には心不全の改善と不整脈抑制作用が,長期的にはLVOTSの改善が期待される.安全性については、かなりの高容量であっても有害事象は認めなかった.