[P28-1] Sotos症候群に合併した慢性心膜炎の1例
Keywords:心膜炎, Sotos症候群, IL-1受容体拮抗薬
Sotos症候群はNSD1遺伝子の機能不全により過成長、発達遅滞などを呈する先天異常症候群である。NSD1遺伝子はヒストンメチル化酵素をコードし、特定の遺伝子の発現を制御するといわれている。今回、心膜炎を発症したSotos症候群を経験したので報告する。【症例】10歳男児。発熱・前胸部~腹部痛のため受診。白血球、CRPの上昇とCTで大量の心嚢液貯留、造影増強効果を伴う心膜肥厚を認め急性心膜炎と診断した。各種ウイルス抗体価、自己抗体の上昇はなく、既知の自己炎症性疾患遺伝子パネル検査でも異常を認めず、特発性心膜炎と診断した。タンポナーデ所見はなく、アスピリン、プレドニゾロン(PSL)を開始した。その後心嚢液は一旦消失したが、PSL中止後に心膜炎が再燃し、コルヒチンを開始したが効果がなくPSLを再開し炎症所見は改善した。その後再度PSL漸減を試みたが再々燃し漸減する事が困難となった。そのため若年性特発性関節炎の治療に準じてTocilizumab、Canakinumabを導入したところ、その後は再発なくPSL 0.3mg/kg/dayまで漸減する事ができている。【考察】小児期における心膜炎の発症頻度は少なく、膠原病、自己炎症性疾患に関連した以外では特発性が最も多い。その病態はIL-1を中心とした自己炎症の関与が考えられている。治療には抗炎症作用を期待してアスピリンやステロイドが用いられるが再発率は15~30%と高い。近年IL-1受容体拮抗薬の有効性が報告されておりAnakinra、Canakinumabだけではなく、IL-1α・1βのサイトカイントラップであるrilonaceptも注目を集めている。一方でSotos症候群に心膜炎を合併した例も少数ではあるが存在する。IL-1産生に関与するNLRP3はNSD1による制御を受けているとの報告もあり、その関連性は病態を考えるうえで興味深い。