第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心不全・心移植

デジタルオーラルII(P29)
心不全・心移植 1

指定討論者:進藤 考洋(国立成育医療研究センター)
指定討論者:平 将生(大阪大学大学院医学系研究科 )

[P29-2] 小児心臓移植後抗体関連型拒絶反応により心停止となった一例

浦田 晋, 小川 陽介, 佐藤 要, 大森 紹玄, 田中 優, 白神 一博, 益田 瞳, 松井 彦郎, 犬塚 亮 (東京大学医学部 小児科)

キーワード:抗体関連型拒絶反応, 心臓移植, 体外循環

【背景】小児心臓移植後患者は移植施設より遠方で居住していることも多く、移植後に生じた重篤な病態に対して初期治療を居住地近くの医療施設で担うことは今後増えると予想される。今回、当院で心臓移植を行った患者が抗体関連型拒絶反応により心停止に至り、連携施設での初期治療が救命につながった経験をしたため報告する。【症例】9歳時に心臓移植を施行し、術後経過は良好で移植後385日目に施行した心筋生検においても拒絶反応の所見は認めなった。抗HLA抗体スクリーニングは移植後22日目にClass 1が8%と上昇したが以降の治療で消失し、移植後385日目の生検時は拒絶反応の所見がなく測定を行わなかった。移植後460日目より疲労感、更に嘔吐や呼吸苦も出現したが家人の判断で自宅療養を継続していた。一時的に改善傾向となったが移植後463日目に症状が増悪し、意識障害にて救急要請された。救急隊到着時、心肺停止であり蘇生をしながら移植後に当院と連携していた近隣施設へ搬送された。病着時は自己心拍が再開していたが、経過より拒絶反応を疑い高用量ステロイド投与を開始した。その後再度心肺停止となったためPCPSおよびIABPを開始した。重篤な状況からAMRを疑い、入院2日目に心筋生検を実施した上で血漿交換を行った。計3回の血漿交換、高用量ステロイド、ガンマグロブリン投与を行い循環動態は改善し、PCPSおよびIABPは入院8日目までに順次離脱となった。生検ではAMRの所見(pAMR2)を認めた。入院14日目に継続治療のため当院へ転院となったが、以降はAMRの再発なく経過した。【考察】今回のように重篤な循環不全となる移植後合併症の一つにAMRがある。循環不全となったAMRは予後不良とされるが、今回は連携施設での初期集中治療が患者救命につながった。今後予測される小児心臓移植後患者の増加は、移植施設以外での初期治療が必要になることも念頭に入れる必要があり、平時での連携の重要性が示唆された。