第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心不全・心移植

デジタルオーラルII(P30)
心不全・心移植 2

指定討論者:平田 康隆(東京大学医学部附属病院)
指定討論者:石田 秀和(大阪大学大学院 医学系研究科)

[P30-2] 乳幼児期に心臓再同期療法を施行した単心室症例での中長期の臨床経過

坂本 真季子1, 東 浩二2, 石井 徹子2, 中島 弘道2, 青木 満3, 青墳 裕之2 (1.千葉県こども病院 小児科, 2.千葉県こども病院 循環器科, 3.千葉県こども病院 心臓血管外科)

キーワード:心臓再同期療法, 心不全, ペースメーカー

【背景】心臓再同期療法(CRT)は同期不全を伴う心不全治療として小児でも有効性が報告されている。しかし年齢や体格、主心室の解剖によっては心筋電極リードやDDDペースメーカーを使用するなど成人例と異なる点も多く、特に単心室症例における有効性や問題点は不明である。【目的】単心室症例に対するCRTの中長期の有効性や問題点を明らかにする。【方法】当院で乳幼児期にCRTを施行した単心室症例2例を対象、臨床経過を後方視的に検討した。CRTの方法は以下とした。開胸術にて心表面エコーで心室収縮の最早期部位と最遅延部位を確認、心筋電極リードはY字リードを用い陽極と陰極を両部位に留置、DDDペースメーカーを使用(Circulation.2012;125:655-658)。【結果】症例1は左心低形成症候群。Norwood手術後に心収縮低下、BDG手術、体肺側副血行路塞栓術を行うも心不全の改善に乏しく1歳5か月時にCRT施行。その後心不全改善し1歳9か月時にTCPC到達。現在CRT施行後10年経過。症例2は三尖弁閉鎖(IIc)、大動脈縮窄。Norwood手術、心室中隔欠損拡大術後に完全房室ブロックを来しDDDペースメーカー留置。BDG手術後に心収縮低下、1歳11か月時にTCPCとともにCRT施行。現在CRT施行後9年経過。両例とも経過中に心室リード閾値上昇による片側ペーシング不全が原因で心機能が低下、心室リード刺激出力を上げ改善した。また各々CRT施行後10年と7年時に施行した心カテ検査時にリード出力調整試験をしたところ、両側ペーシング時に心拍出量が最も増加した。【結語】単心室症例に対するCRTは中長期でも有効性が示されたが、経過中に片側ペーシング不全が起こる恐れがあり厳重な管理が求められる。また今後の問題点として、心室リードの交換時期や再留置法などが挙げられ、更なる検討が必要である。