[P31-3] 神経性食思不振症患者の特異な循環調整と心機能変化
Keywords:心機能, 自律神経, ICG
【背景】神経性食思不振症(AN)の心血管障害の原因として、自律神経、神経内分泌、免疫系の関与が挙げられるが、治療に伴う変化を含めその詳細は不明である。今回AN患者において、治療経過中複数のモダリティで心機能評価を行い興味ある知見を得たので報告する。【症例】15歳女児。入院時身長163cm体重32.6kg(BMI 12.3)。著明な甲状腺機能低下を認めたがTSHの反応は乏しかった(fT3<0.4pg/ml、TSH3.3)。Cortisolは経過中一貫して高値(20 μg/dL)を示したのに対し、renin-aldosteroneは正常。P含め電解質異常は認めなかった。心エコーでは、心腔の狭小化(LVDd=32mm: 正常40mm)、低心拍出(1.7 l/min/m2)、EFの上昇(80%)、e’の軽度低下(9mm/s)と著明な心嚢水貯留を認めたが、Speckle tracking法で局所性の壁運動低下は認めなかった。renin/aldosterone活性変化と相応して、ICG検査で、るい痩、低CIにもかかわらず循環血液量は93.3ml/kgと多く、静脈収縮による血液Centralization適応の欠如が認められた。入院103日体重回復(36.7kg)に伴い、LVDdは37.1mm と上昇もEFは横ばい、CIは2.6l/min/m2に増加した。LVDd 上昇を反映しBNPは11から34pg/mlに増加したが、LVDdは尚も正常以下で潜在的心機能不全(心負荷)を示唆した。fT3は1.4 pg/mlまで回復し、fT3は心拍出量の上昇、e’の改善と正の相関を示した(それぞれr=0.88,0.64)。【考察】ANにおいて1.体液維持、分布の適応異常が存在、2.EFでは評価できない潜在的心機能不全と予備能低下が存在、従ってRefeedingに伴う心不全発症の原因になりうる、3.CortisolはANの循環維持に重要な役割を演じている可能性がある、4.甲状腺機能低下は、ANの心機能低下、循環不良に密接に関係しており、循環破綻における治療Optionになりうる、また、ANの心嚢水貯留の主因では必ずしもないこと、が示唆された。上記の検証はANの病態解明と心不全予防に大きく貢献しうると思われた。