The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラルII(P34)
術後遠隔期・合併症・発達 3

指定討論者:萩野 生男(千葉県こども病院)
指定討論者:泉 岳(北海道大学)

[P34-1] Fontan手術後患児におけるGH治療は蛋白漏出性胃腸症発症のリスク因子である

本間 友佳子, 岡田 朝美, 小谷 裕美子, 早渕 康信 (徳島大学大学院 医歯薬学研究部 小児科)

Keywords:蛋白漏出性胃腸症, Fontan術後, GH療法

【背景】Fontan手術後は低身長を来しやすい。成長ホルモン分泌不全(GHD)の診断を満たし、GH療法を施行する患児も多いと考えられるが、これまでに蛋白漏出性胃腸症 (protein losing enteropathy; PLE) の発症のリスクとの関連について一定の見解はない。我々はGH投与開始に合致してPLEを発症・再燃した2例を経験したので報告する。【症例1】12歳男児。左室低形成、両大血管右室起始、Fontan術後。2歳でFontan(lateral tunnel)術を施行したが、心不全のために4歳でTCPC conversion、5歳時に左肺動脈ステント留置を施行した。この頃PLEを発症し、ステロイドを含めた内科的加療で寛解が得られ、その後ステロイドは中止した。12歳からGH治療を開始したところ、PLEを発症した(TP 4.9g/dl, Alb 2.8mg/dl)。GH療法は全身状態に合わせて断続的に行ったが、低蛋白血症が持続し、13歳時に中止した。【症例2】8歳男児。左心低形成症候群。TCPC術後に左肺動脈狭窄を認めたため、右肺動脈のみでFontan circulationを保ち、左肺動脈はB-T shuntから灌流していた。この時期に心不全とPLEを発症したが、ステロイドを含めた加療で治癒した。6歳時にB-T shuntを結紮し、左肺動脈も含めた完全なTCPCを施行し、PLEは寛解を維持していた。8歳で低身長のためにGH療法を開始し現在も継続しているが、GH療法開始以降、TP 5.3-6.4g/dl, Alb 3.2-4.0g/dlと低値傾向が持続している。 【考察】GHにはアルドステロン類似の水分貯留作用があるとされる報告がある。また、GH投与の継続はソマトスタチンなどによる消化管リンパ管流制御への影響が懸念される。これらの作用機序からGH治療がPLEの誘発因子となる可能性が示唆される。【結論】 Fontan手術後患児に対するGH治療はPLEの発症に注意し、慎重に検討すべきである。