[P34-2] 当科における感染性心内膜炎の臨床像
Keywords:感染性心内膜炎, 不顕性, 弁瘤
【背景】感染性心内膜炎(infective endocarditis;IE)の臨床像は非特異的かつ多彩であり,診断が困難な時もある.【目的】当科で経験したIEの臨床像を明らかにする.【方法】対象は1998年1月~2020年12月迄の間に当科でIEと診断し,治療を行った患者.年齢,性別,基礎疾患,診断根拠,契機,症状,起因菌,治療経過につき,診療録を用いて後方視的に検討した.【結果】症例は10例(1例再発含む) (男性6女性3),年齢中央値30.5歳(1-60歳),基礎疾患は心室中隔欠損(ventricular septum defect;VSD)4例,ファロー四徴(tetralogy of Fallot ; TOF)とマルファン症候群(Marfan syndrome;MFS)各2例,肺動脈弁狭窄1例.VSD 4例は未修復,TOF 2例は修復術後,MFS 2例はBentall術後であった.修正Duke診断基準を用いて臨床的確診7例,病理学的確診2例.臨床的確診例中,大基準を2つ満たした症例は2例,5例は大基準1つと小基準3つを満たした.この5例中血液培養(blood culture;B/C)結果が大基準を満たした症例は1例のみで,5例中3例でB/C採取前に抗菌薬が投与されていた.契機は1例歯科治療を認めた他は不明であったが,4例で定期受診が途絶える等,疾患に対する理解不足が伺えた.発熱を認めた症例は7例(70%),起因菌はMSSA 3例,MRCNS 2例,CNS 2例,腸球菌1例,不明2例.起因菌が不明であった2例は病理学的確診例で,1例は肺動脈弁瘤に対する手術後の,1例は左肺動脈内腫瘤に対する手術後の病理組織診断にて確定診断となった. 1例はB/C陰性,1例は培養未施行であった.2例とも発熱なく,IEとして抗菌薬加療を行っていなかった.【考察】当科で経験したIEは,臨床的確診例ではB/Cが大基準を満たす事は少なく,抗菌薬使用前のB/C採取の重要性を再認識した.病理学的確診例は不顕性IEと考える.弁瘤に対する手術症例で同様の経過が報告されているが,数は少なく,また肺動脈内腫瘤という臨床像報告は無い.不顕性IEは診断されていない可能性もあり,その病態については今後の検討を要する.