第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラルII(P35)
術後遠隔期・合併症・発達 4

指定討論者:深江 宏治(熊本市立熊本市民病院)
指定討論者:川﨑 志保理(順天堂大学心臓血管外科)

[P35-1] 総動脈幹症術後に合併した肝細胞癌

田原 昌博1, 森田 理沙1, 浦山 耕太郎1, 真田 和哉1, 山田 和紀2 (1.あかね会土谷総合病院 小児科, 2.あかね会土谷総合病院 心臓血管外科)

キーワード:hepatocellular carcinoma, cardiac hepatopathy, cirrhosis

【背景】Fontan循環に伴う低心拍出と肝鬱血は心臓肝障害の主な原因であり、高度な肝線維症は肝細胞癌(HCC)合併に関与している。近年、Fontan術後患者におけるHCC合併の報告は増加傾向であり、2018年の本邦からの報告ではHCC合併率は1.1%と推定されている。一方で、Fontan術を受けていない先天性心疾患(CHD)患者のHCC合併も稀だが極少数報告されている。発症機序の推察から、成人先天性心疾患領域におけるフォローについて考察を行った。【症例】30歳女性。在胎41週、出生体重2995gで出生。日齢1に心雑音、チアノーゼを認め、総動脈幹症と診断。生後4ヶ月でRastelli術(Hancock 14mm)施行。術後LOS重度。感染性心内膜炎を合併し、生後6ヶ月で人工血管置換術施行。術後LOS重度。その後、右室圧上昇に対し、4歳3ヶ月で右室流出路形成術(三尖付心膜ロール)、12歳7ヶ月で右室流出路形成術(一弁付パッチ)施行。洞停止を認め、20歳4ヶ月時にペースメーカー留置施行。右室圧上昇し、30歳0ヶ月時に肺動脈弁置換術(Trifecta 23mm)施行。術後に創部感染を合併し、CT撮像時に偶然、肝左葉に低吸収域を認めた。エコー、MRIなどでHCCは否定できなかったが、精神遅滞があり、家族と相談の上、肝生検はしない方針となった。腫瘍マーカーも含めてフォローし、32歳6ヶ月時にAFP上昇と肝右葉にも結節性病変の出現を認め、臨床的にHCCと診断した。積極的治療を行った場合のQOLを考え、家族と相談の上、見守り方針となった。その後、33歳3ヶ月時には肺転移を認め、33歳9ヶ月自宅で永眠された。【考察】小児期からCVP高値であることが多く、高度の肝鬱血が肝線維化とHCC合併に関与した可能性があると考えた。Fontan術後でないCHD患者にもHCC合併の可能性はあり、特に右心系負荷などにより肝鬱血の存在が疑われる患者では、肝臓に対する早期からの画像評価を含めた定期フォローが必要である。