[P35-3] Fontan型手術後の肝線維化の後方視的検討
キーワード:Fontan, FALD, 肝線維化
【背景】FALD(Fontan associated liver Disease)における肝細胞癌(HCC)の発生率はFontan型手術後経過年数に相関することが知られている。FALDのHCCは肝うっ血により経時的に肝線維化(HF)が進み、肝硬変を経て発症する病態が推察されている。HFを早期に検出し、その後のLC、HCCへの進行を抑えることが必要である。【目的】Fontan型手術後の患者において、HFの有無とそのリスク要因について検討すること。【対象と方法】当院のFontan型術後の患者で、2010年3月から2019年12月までの間に血液検査、心臓カテーテル検査、腹部エコー検査を行った113名(男67名、女46名、年齢1~31歳、中央値7歳)を対象とした。腹部エコー上、肝実質の輝度上、肝辺縁不整、肝腫大の所見を認めたものをHFとし、HFあり(F群)とHFなし(N群)の症例について、Fontan術後経過年数、心臓カテーテル検査結果、肝線維化マーカー(ヒアルロン酸、4型コラーゲン)などの血液検査を後方視的に比較検討した。【結果】F群ではN群と比較して、有意にFontan術後経過年数が長く(6 年vs2.5年, p=0.002)、中心静脈圧(CVP)が高く(13.6mmHg vs.12.6mmHg ,p=0.024)、血小板数が低値であった(19.7*104/μl vs24.2*104/μl ,p=0.008)。2群間で肺血管抵抗値、血清ビリルビン、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、肝線維化マーカーでは明らかな差を認めなかった。多変量解析では、Fontan術後経過年数、CVP、女性がHFの危険因子であった。【考察】Fontan術後経過年数が長く、CVPが高い症例ではHFのリスクが高く、経時的な心臓カテーテル検査による評価が必要であることが示唆された。また、腹部エコーによるHFの定性的評価は検者の依存するため、他の指標でHFが疑われる場合は、腹部造影CTやMRIによる鑑別を行うべきと考えられた。