The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラルII(P35)
術後遠隔期・合併症・発達 4

指定討論者:深江 宏治(熊本市立熊本市民病院)
指定討論者:川﨑 志保理(順天堂大学心臓血管外科)

[P35-4] 臨床的に安定していると考えられていたが肝内腫瘤を認めたFontan術後の2症例

藤崎 拓也1, 高橋 邦彦1, 森 雅啓1, 橋本 和久1, 松尾 久実代1, 浅田 大1, 石井 陽一郎1, 青木 寿明1, 磐井 成光2, 萱谷 太1 (1.大阪母子医療センター 小児循環器科, 2.大阪母子医療センター 心臓血管外科)

Keywords:Fontan, FALD, 肝細胞癌

【はじめに】Fontan術後の肝合併症(FALD)は肝線維症から肝硬変に進行し、最終的に肝細胞癌を発症する例の報告が増えてきている。肝線維化や肝機能障害の進行度を予測する指標や肝腫瘍のマーカーは存在し、臨床の現場ではそれらを参考に診療にあたっているが、今回これらの指標・マーカーが低値を示していたにも関わらず肝腫瘍が発見された2症例を経験したので提示する。【症例1】18歳男性。診断は右側相同、単心室。6歳時にFontan手術施行。16歳時の心臓カテーテル検査では、CVP 13mmHg、CI 2.1L/min/m2。17歳時の血液検査では、肝逸脱酵素の上昇なく、AFP 3.0ng/mL。肝線維化の指標であるAPRI:0.33、FIB-4:0.45 は共に低値、肝予備能の指標であるMELD-Xi:9.5も低値であった。その後施行した腹部超音波検査で肝左葉に径15mm程度の腫瘤性病変を認めた。造影MRI検査で肝細胞癌が疑われ、腹腔鏡下部分肝切除術が施行され、組織学的に高分化肝細胞癌、高度異型結節と診断。【症例2】21歳男性。診断は両大血管右室起始。4歳時にFontan手術施行。21歳時の心臓カテーテル検査では、CVP 9mmHg、CI 5.1L/min/m2。血液検査では、肝逸脱酵素の上昇なく、AFP 5.0ng/ml。APRI:0.47、FIB-4:0.79は共に低値であったが、MELD-Xi:14.6と軽度高値を示していた。21歳時の腹部超音波検査にて肝左葉に径19mm程度の腫瘤性病変を認めた。現在、精査を進めている。【考察】肝線維化の評価には肝生検による組織学的評価が最も信頼が高いが、侵襲的であり繰り返しできるものではない。しかしながら、上記に示す指標も検出の限界がある。特に肝細胞癌であれば、早期に発見・治療が重要であるため、腹部超音波検査を繰り返し行うことが肝要と考えられる。